撮影/高橋宏幸
取材班は、「コロナ飯」と題された店のリストを入手した。ミシュランに輝いたことのある鮨店から大衆居酒屋まで、主に港区や新宿区の飲食店が数十店舗羅列されているのだが、そのうちの一つ、六本木にある焼き肉店を訪ねて驚いた。
訪問したのは日付が変わる24時頃だったのだが、店内は超満員。「次に案内できるのは午前2時前になりますね」と入店すら叶わなかったのである。
仕方なく足を赤坂に向けると、平時から24時間営業している韓国料理店を見つけた。こちらも平日の真夜中にもかかわらずほぼ満員の大賑わいで、団体客が和気あいあいと料理に舌鼓を打っている。
近くのホテルに宿泊し、飲みに来たと語る男性サラリーマンに話を聞くことができた。
「飲食店がほとんど自粛して20時以降は開いていないから、逆に飲み食いできる店の情報は貴重。コロナ飯のリストは僕も有効活用させてもらっています。今後、改正特措法が発令されてより厳しくなると思うとゾッとしますね」
報道されているように、コロナ関連の改正特措法が施行され、自治体の長による営業時間の短縮命令に従わないと最大30万円の罰金が科せられるのは2月13日から。現時点ではあくまで自粛要請止まりで、従わなかった場合、飲食店は補助金がもらえないというデメリットを負うくらいだ。
だが、法律による厳罰化をもってしても、夜の街を完全に取り締まるのは困難かもしれない。午前2時頃、渋谷区内の雀荘を覗きに行くと、そこには弛緩しきった常連客の姿が見られた。
「お客さんが多いときはマスク着用でお願いしていますが、終電から始発くらいの時間帯はそこまで密にならないので誰もしていません。正直、今はコロナ慣れしてしまって、行政の目を気にしながら細々と営業している感じです。麻雀なんてその気になればアプリを使ってオンライン対戦もできる時代ですが、やはり対面しながら打ちたいってニーズは根強くあります」(麻雀店の店主)
飲む、打つ、買う――どれもが根絶とは言い難い状況で営まれる、夜の街。サウナや風俗店など他の娯楽施設に関して取材した結果は後述の通りだが、自粛しきれない人々で溢れている印象は拭えない。これでは要請に従って時短営業している飲食店が泣きをみるのではないだろうか。
そもそも、政府が推し進める規制自体を疑問視する声もある。データ分析などを専門とする東京大学大学院工学系研究科の大澤幸生教授が語る。
「営業時間を20時までと限定したことで、より密になっている飲食店が増えてしまっています。
感染拡大防止に重要なのは、身内でない不特定多数の客と密にならないこと。このような状況になるくらいなら、テーブルの間を広く保つような工夫を要請したほうがよっぽど感染拡大防止に繋がるはずです。
データ上、全国民が飲食店に2割、居酒屋に4割まで訪れる頻度を落とせば、感染拡大は相当抑えられます。さらに変異種がどんどん来るので、そのたびに持続的に適応できるルールを作らなければ、飲食店は生き残れません」