「クローズアップ現代」放送後の記念写真、もう1枚
放送が終わると毎回、制作チームが参加してNHK近くの飲食店で打ち上げの会が開かれる。国谷さんも都合が合う時には参加してくれた。その時に聞いた話がある。
国谷さんはNHKの職員ではない。毎年契約でキャスターを務めていたが、もともとは通訳としてNHKで働くようになったそうだ。その頃、呼ばれてNHKに来ても、結局仕事がないまま帰されることがあったという。そんな時、
「こういう扱いを受けないようになりたい」と考えていたそうだ。非正規雇用の辛さを感じたからこそ、そんな思いも自らの原動力にしていたのだろう。
だからこそ現場は国谷さんの続投を望んでいたのだが、
政権の意向を受けて国谷さんの降板に動いたのは、板野祐爾専務理事・放送総局長(当時)だと言われている。NHKの放送職場のトップだ。
板野氏は元経済部記者。2015(平成27)年、安保法制の反対デモが大きなうねりとなった時、NHKニュースで放送させなかった責任者として、当時のNHK会長・籾井勝人氏が指摘した人物だ(筆者記事
「籾井勝人・元NHK会長が、安保法制反対デモの報道を止めたのは『放送総局長かな……』と名指し」参照)。何かと政権の意向をくんで動く人物だと、NHK内外で広くみなされている。
この年の3月には、「ニュースウォッチ9」のキャスターを5年間務めた大越健介氏も降板している。「物言うキャスター」と評判だったが、この時も突然の決定だったため、
官邸の意向を受けて板野氏が動いたのではないかとNHK内でささやかれた。
その後、板野氏は専務理事を退任して関連会社に転出していたが、おととし2019(平成31)年、再び専務理事に復帰した。経営委員長の意向を受けた異例の返り咲きだと評判になった。
板野氏の専務理事としての担当分野は、業務改革統括と新放送センター業務統括。放送総局長を兼務し、放送全般に発言力があった前回に比べ、役職上は放送についての発言権がなく、権限が押さえ込まれているように見える。だからNHK内では、
「政権の意向で板野氏を専務理事に復帰はさせたが、面従腹背で、ウラでこっそり影響力を削ぐようなポジションにしたのではないか?」と受け止める向きもある。
だが報道局内の事情に詳しい人物は、
「専務理事の役職さえあれば報道に影響力は行使できます。今回も政権の意向を受けて動いているんじゃないですか? あ~やだやだ」と語る。
「今回も」というのはもちろん、記事の冒頭に記した「ニュースウォッチ9」の有馬嘉男キャスターの「降板」人事だ。まだ決まってはいないが
「ウラで板野氏が動いているに違いない」という見方だ。板野氏について
「獅子身中の虫」「トロイの木馬」などと、さらに辛辣な評価もNHK内部で聞く。