「既存のマスコミが伝えない、この世界の真の姿を知っている」という優越感
「Qアノンが提示したストーリーというのは、トランプを選挙で勝たせたかった陣営によって巧妙に作られた物語だったのではないか」
私は今、そのように疑い始めている。トランプ支持層であるキリスト教右派は、妊娠中絶を批判するような性的な厳格さを重んじる傾向にある。そういう支持者たちにとって、
“売春”“小児性愛”などは最も刺さりやすいパワーワードだ。そうした言葉をちりばめながら、トランプ氏のセクハラ疑惑やエプスタイン氏との関係など、触れてほしくない部分はぼかしている。よく練られたシナリオだ。
「陰謀論」界隈からは、次から次へと新しい刺激や興奮を与える新ネタが登場する。「ディープステート関連」とされる謎めいた暗号や記号を解いていくのも、ゲーム感覚でのめりこんでしまう。
「既存のメディアが伝えない、この世界の真の姿を知っている」といった歪んだ優越感に浸ることで、ますます現実世界と解離していく。
秘められたコンプレックスに、狡猾につけ入ってくるQアノン
恥ずかしながら私も、その詐術にハマってしまったのだ。当たり前の矛盾に気がつかなかった理由の一つとして、
私自身の“売れている芸術家に対してのコンプレックス”があったのではないかと自己分析している。
Qアノンはレディー・ガガなど反トランプのセレブたちに、根拠も十分にないままに「小児性愛者」のレッテルを貼り、彼女たちが「いずれ逮捕される」と主張した。
きらびやかで経済的にも大成功しているセレブたちが罰せられ、落ちぶれる姿を見てみたい――。そんな妬み・嫉みに、Qアノンは狡猾につけ入ったのだ。
今回の例によらず、選挙の際に用いられる世論誘導のシナリオは
“どの層”に“何が刺さるのか”がよく練られている例が多い。そうしたことに着目すると、今後の世の中での事象を分析するときに役立つだろう。