![©行成薫/集英社 ©映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会](https://hbol.jp/wp-content/uploads/2021/01/2c63e22bca00c5e2e9fbb10cf354b0a1-550x389.jpg)
©行成薫/集英社 ©映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会
1月29日より、映画
『名も無き世界のエンドロール』が公開されている。
本作は第25回小説すばる新人賞を受賞した行成薫の同名小説の映画化作品であり、押しも押されもせぬ人気俳優の岩田剛典と新田真剣佑の初共演も目玉となっている。
結論から申し上げれば、ミステリーとしての面白さもさることながら、テーマが非常に今日的でもある、多重的な魅力を持つ素晴らしい作品であった。ネタバレにならない範囲で、その特徴や魅力について記していこう。
幼馴染のキダとマコトと、11歳の時に転校してきた少女のヨッチの3人は、家族よりも大切な親友同士であった。だが20歳のある日、ヨッチは2人の前から突然いなくなってしまう。その後、表と裏それぞれの社会でのしあがってきたキダとマコトは、10年の歳月をかけて「プロポーズ大作戦」と称した計画を実行に移すことになる。
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©行成薫/集英社 ©映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会
本作の最大の特徴にして魅力は、この物語が時系列を激しく前後させる形で提示されることだ。ファーストシーンは2人の主人公が30歳を越えた後のクリスマスイブの夜、そこから彼らの幼少期や高校時代といった過去に遡り「プロポーズ大作戦とは何か?」「なぜ親友のヨッチは姿を消したのか?」という謎を解き明かしていくことになる。
ともすると難解な内容に思われるかもしれないが、実際は論理的かつ精緻に物語が構成されているため、混乱することはないはず。「小学生時代から20歳までが1本の時間軸、20歳から現在までをもう1本の時間軸とし、この2本の時間軸で物語を走らせる。そして各々の軸の中では時間をバックさせず、時制通りに進めていく」という計算の元で、映像作品として理解しやすいように作ってあるのだ。
構成そのものは全く異なるが、時系列の入れ替えによってミステリーの面白さを底上げし、断片的な要素からじわじわと謎の真相が明らかになっていく様は、クリストファー・ノーラン監督の『メメント』(2000)をも思い出す。ファーストシーンをクライマックス直前に置くという「掴み」もあるため、「どうやったらここに行き着くのか」という興味もずっと続くようになっている。
とにかく、「時系列を激しく前後させる複雑にも思えるミステリーなのに、誰が観てもわかりやすいエンターテインメント」として、この『名も無き世界のエンドロール』は万人にオススメできる。
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撮影に近藤龍人、音楽に佐藤直紀など、日本映画界を牽引するスタッフも集結しており、格調高くも仕上がっているので、ぜひ細部にわたる画や演出の工夫にも注目してほしい。