社会的弱者が強者に戦いを挑む『名も無き世界のエンドロール』、その「映画ならでは」の魅力

山田杏奈演じる少女の魅力

 本作は仲良し3人組のかけがえのない友情を描いた物語でもあり、彼らの幸せな日常が「ずっと見ていたくなる」「心から彼らの幸せを願いたくなる」よう、尊く描かれているのも大きな魅力だ。
©行成薫/集英社 ©映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会

©行成薫/集英社 ©映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会

 それは役者の力の賜物。主演の岩田剛典と新田真剣佑が素晴らしいのはもちろん、山田杏奈が天真爛漫だがどこか影を感じさせる愛らしい少女を好演している。彼女は直近で主演作『樹海村』と出演作『哀愁しんでれら』(いずれも2月5日公開)が待機中の若手実力派女優であり、観ればきっとその活躍を今後も追い続けたくなるだろう。

「大切な記憶」を呼び起こす構成

 その山田杏奈演じる少女は、「20歳から現在」の時間軸にはなぜか存在しなくなってしまう。その喪失感と不安感もまた「彼女がどこに行ったのか?」と興味を惹き、同時に彼女がいた「小学生時代から20歳まで」の時間軸がさらに儚いものに感じられるようになっている。
©行成薫/集英社 ©映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会

©行成薫/集英社 ©映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会

 本作における時系列の入れ替えは、決して気を衒っただけのものではない。ミステリー的な面白さにつながるだけでなく、「親友だった少女がいた時間」が、その後の10年をかけて「プロポーズ大作戦」を練ることになる主人公2人の「大切な記憶」として呼び起こされたような印象も得られるのだ。  実際に、劇中で山田杏奈演じる少女は、「忘れられることが怖い」ということを口にしている。いわば、この断片的に彼女の記憶を提示する構成そのものが、劇中の彼女のその想いに応えているとも言える。  他にも、ありとあらゆる「何気ない」セリフもまた彼らの記憶に関わる、とてつもなく切ないものになっている。その1つ1つを、ぜひ注意して聞いてみてほしい。
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権力者に立ち向かう物語
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