――最後に、大空氏が東大金融研究会に期待していることは何でしょうか。
大空:以前、東大研究会で柔道金メダリストの大野将平選手に話を伺ったとき、こんな話がありました。
「僕は周りから“攻めだるま”だと思われていますが、実は心の中では80%ディフェンス。体力に自信があるから延長戦まで持ち込めば勝てる自信がある。だから、そこまで負けないことが大切なんです。でも、ディフェンスに終始しているだけでは相手に悟られてしまうし、隙にもなってしまう。なので、見かけ上は100%攻めの体制を見せつつ、心の中では80%ディフェンスをやっています。そのバランスがとても難しいんです」と。
これは金融でも言えることで、100%攻めるとリスクを負いすぎてしまうんですね。こういう話を学生が吸収して、シナジーが生まれることを期待しています。
※株価は1/29終値。取材は昨年11月
東大金融研究会が注目する銘柄…マネーフォワード 3994(TYO)
現在株価 4300円 売買単位 100株 PER/PBR ―倍/21.32倍
’23年10月から消費税の仕入税額控除の方式として新たにインボイス制度が導入され、適格請求書を交付できるのは、「適格請求書発行事業者」に限られる。そこで飛躍が期待されるのが、freeeとマネーフォワードという大手2社だ。
「現状では、バリュエーションの観点ではfreeのほうが圧倒的に成長率が高く、事実、パフォーマンスでも勝っています。しかし、マネーフォワードのウィークポイントとされている事業展開の豊富さが、今後は多角的で有益なデータとしてみなされ、将来的には評価が逆転する可能性も十分に考えられます」(石川氏)
石川氏が注目する銘柄…ベイカレント・コンサルティング 6532(東1)
現在株価 1万5770円 売買単位 100株 PER/PBR 33.26倍/9.30倍
石川氏が注目しているコンサル企業のなかでも、ベイカレント・コンサルティングは別格だ。
「直近の決算を見ると営業利益率が30%もあり、増収増益傾向にあります。一時、PERは40倍を超えており、現在は30倍超で落ち着き始めていますが、それでもまだ割高な傾向が続いています。しかし、ほぼ同業種の船井総研ホールディングスもPER35倍とそれほど差はありません。ならば、東大・京大の人材が多く流入するベイカレントの伸び率のほうが高いと考え、シャープレシオの観点からポジションを構築してみたい」
松下氏が注目する銘柄…エムスリー 2413(東1)
現在株価 8811円 売買単位 100株 PER/PBR ―倍/34.20倍
新型コロナ対策に大きく寄与したことで注目され、株価は年初来でほぼ2倍に。日経平均株価指数の構成銘柄で’20年、大きく値を上げた銘柄であるエムスリー。
「日本の医師の登録者割合は90%と言われ、日本のマーケットではすでに頭打ちになっている感は否めません。しかし、コロナとの相関性を鑑みると、成長速度に多少陰りはあっても、みなされているほど将来性がないとは思えない。また、今後のグローバルな展開も着目すべき。日本での1%上昇と世界での1%上昇とでは規模がまったく違う。そういう観点からも優秀だと思います」
【大空 翔氏】
東大卒、ゴールドマン・サックスなどを経て、ヘッジファンドで長く運用に携る。幅広い分野にパイプを持ち、東大金融研究会の活動に注ぐ。ツイッターは
@ozorakakeru
【石川 憧氏】
開成高校出身。東京大学経済学部3年。大空氏が「最も優秀」と絶賛する逸材。現在は就職活動中ながら、並行して大空氏とともに書籍制作にいそしんでいるという。
【松下寛典氏】
東京大学工学部3年。卒業後は院に進学予定。サッカーとファッションが好き。俯瞰力に優れ、合理的に分析することに長けている。人間の行動心理に興味アリ。
<取材・文/櫻井一樹 撮影/ヤナガワゴ-ッ!>