東大金融研究会で開かれた交流会の様子。「今でこそこうして集まれますが、コロナ禍はZoomによる開催でした。やはり一流の空気感を生で感じられるほうがいい」(石川氏)
――石川さんと松下さんは、普段どのような生活をしていますか?
石川:僕は経済学部経営学科の3年で、就職活動中です。戦略コンサルか投資銀行か運用業務か……この3つのどれかに就職したい。
投資歴はまだ1年ほどで、自分のお金を80万円くらいしか入れていないので、勉強中の身です。最近読んだ本は『
MBAバリュエーション』が印象的でした。投資銀行の役割がわかったりするので、就職活動の参考にもなります。株式投資においても、企業価値の算定プロセスや構成要素を知ることは適正な「投資価値」を知ることにつながると考えています。
松下:僕は工学部3年で大学院に進学予定です。投資はまだやっていません。というのも、自分も含めて東大生は今まで「答えのある問題」に対峙してきましたが、投資や自分のキャリアは数学のように割り切れる答えのない世界。自分の正解を自分で導かなければいけない、と考えています。そのために、今はまだ知見を広める時期。
投資と関係ないですが、好きな本は『
サピエンス全史』です。文化人類学的な人間の行動心理にも興味があって、それをいずれ投資にも生かせたらいいなと思っています。
大空さんは普段、本を読まれたりするんですか?
大空:まったく読まない(笑)。でも、たまたま最近、松岡正剛さんの『
擬 MODOKI』を読んだかな。東大金融研究会に落合陽一さんを呼んだとき、彼が松岡さんと懇意らしくおすすめされて。物事を見る目が研ぎ澄まされる感じがして、とても面白かったですよ。
――投資については、お三方は昨今の情勢をどのように見ていますか?
石川:コロナの影響で業界ごとの勢力図は様変わりしました。ITや衛生用品、デジタル関連だとDX(デジタル・トランスフォーメーション)がトレンドとなっているのは、世間でもコンセンサスを得ていると思うし、僕自身も中長期的に伸びていくと思います。
松下:たしかにDXは成長すると思いますが、言葉が先行しすぎて実態と乖離してしまう可能性を危惧しています。リモートワークが顕著で、トレンドとしては推進だけど、実態はまだまだ浸透していない。
こういった乖離がいろいろな領域で発生してしまうと、判断が難しくなりますよね。売り上げや利益は投資判断の重要なファクターだと思うので。
石川:そうですね。その中で、銘柄選択にあたって僕が優位に立てるのは就職活動中ということかなと。コロナ禍での企業活動をリアルタイムで追っていることを投資に役立てたい。
この観点で注目しているのはコンサルティング業界です。全体では年率5%近く市場が伸びているのですが、ここにDXが絡むと25%となり期待が持てます。あとは、日本M&Aセンター。菅総理が推奨している中小企業再編のトレンド下にあり、中小型案件の数が上場企業で最多。大型案件も少しずつ増えてきていて増収増益傾向にあり、注目しています。
松下:僕はまだ株式を運用した経験がないので、俯瞰的な話になりますが、エムスリーはあと数年は伸びるんじゃないかなと。というのも、直近の決算でコロナ禍の影響によって上がっている事業とそうでない事業をチェックしました。すると、もっともコロナの影響を受けていそうな人材系があまり下がっていなかったんです。
つまり、もしコロナがなくても、業績の伸びは変わらなかったんじゃないかと仮定できます。これは、コロナのワクチンへの期待やワクチン流通後の株価下落や業務停滞が起きづらいことを表していると思います。