台本を読むだけの“茶番劇”。「緊急事態」でも菅首相の言葉が響かない理由

どんな質問に対しても、用意された回答文を読み上げ続ける菅首相

首相会見に同席した、新型コロナウイルス対策分科会・尾身茂会長

首相会見に同席した、新型コロナウイルス対策分科会・尾身茂会長。「尾身さんの話のほうがわかりやすかった」との声も多い

 山田氏が「ここからは、幹事社以外の記者会の方に質問していただく。それでは共同の吉浦さん」と指名。吉浦氏は「PCR検査を充実させないのか」と聞いた。ここでも菅首相は、質問の時から台本に目を落として回答を読んでいる。次に「フジの鹿嶋さん」が指名された。こうして“台本通り”の会見が進んでいく。  続いて、山田氏は「それでは、えっと……外国プレスなどから質問を受けたい。ロイターのタケナカさん」と指名。タケナカ氏は「五輪を人類がコロナに打ち勝った証として開くと言ってきたが、状況が変わった今、開催の可否はどうか。国民の3分の2は開催に懐疑的だ。総理の思いは」と聞いた。  菅首相は「新型ウイルスに対応し、安全安心な大会を実現したい。バッハIOC会長との会談で、開催で一致している。(ワクチン)接種でしっかり対応すれば、国民の雰囲気も変わってくると思う」と回答を読み上げた。 「それでは次のご質問は記者会から。中国新聞のシモクボさん」。中国新聞の記者は「中国新聞のシタクボ(下久保)です」と名乗って、核兵器禁止条約について聞いた。菅首相は「核兵器保有国と非保有国の橋渡しをしたい。我が国は署名する気はない」と答えた。これも台本を読んでいる。    次に「毎日の笈田(おいた)さん」が指名され「パチンコ店への規制などがない。中途半端な対応ではないか」と聞いた。菅首相は「感染の大部分が飲食からだ」などと回答。ここでも用意された回答文を読んでいた。

“台本通り”の茶番劇はまだまだ続く

「次は、記者会以外の方に。ドワンゴの七尾さん」と指名。七尾氏はまず「総理、連日お疲れ様です」と菅首相を慰労して、人流データなどのさまざまなデータの活用について聞いた。これは露骨なゴマスリ質問だった。 「次は、記者会の方。京都の国貞さん」と指名。山田氏は京都新聞がお気に入りで、毎回のように指名している。「大阪を宣言の対象にする時は、京都・兵庫も含むか」と質問。この答えも当然、菅首相は台本を読み上げた。  そして山田氏は「内閣記者会以外の方。ラジオ日本の伊藤さん」と指名。憲法改定と特措法の緊急事態との関係を質問。これも、菅首相が会見で聞いてほしい質問だった。菅首相は回答を読んでいる。  山田氏は「予定の時間になった。次の日程の関係もございますので、最後の質問としたい。それでは、テレ朝、吉野さん」と指名。持続化給付金の継続に関する質問だった。  山田氏は「会見のほうはこれで終えたい。みなさんのご協力に感謝申し上げる。挙手されている方は、メールで質問を送ってくれれば、総理の回答を送る。回答は(官邸)ホームページでも公開する」と言って、会見を閉じた。52分の会見だった。
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首相に都合の悪い質問をする人間はいなかった……
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