しかし、休業支援金・給付金をめぐって大きな問題が発生している。申請方法は労働者が自ら申請できるものと先ほど説明したが、休業の事実を確認するために、事業主が休業指示をしたことを証明するための事業主記載欄が申請書にあるのだ。原則として、その事業主記載欄への記入がなければ休業支援金・給付金の対象とならない。
つまり労働者自ら申請できると言いつつ、結局は事業主の協力が必要になっている。そして、事業主・企業が協力をしてくれないという事態が多発しているのだ。
筆者が活動する首都圏青年ユニオンにも、「申請書の記載を事業主から拒否された」「事業主が休業と認めてくれない」などの相談が相次いだ。企業が協力しない問題を受け、10月30日に厚労省は以下のような基準を示し、休業支援金・給付金の活用を促している。
(1)労働条件通知書に「週○日勤務」などの具体的な勤務日の記載がある、申請対象月のシフト表が出ているといった場合であって、事業主に大して、その内容に誤りがないことが確認できるケース
(2)休業開始月前の給与明細等により、6ヶ月以上の間、原則として月4日以上の勤務がある事実が確認可能で、かつ、事業主に大して、新型コロナウイルス感染症の影響がなければ申請対象月において同様の勤務を続けさせていた意向が確認できるケース(ただし、新型コロナウイルス感染症の影響以外に休業に至った事情がある場合はこの限りではない)
企業が申請に協力してくれない場合でも、こうしたケースに当てはまれば、休業支援金・給付金を活用できるのだ。
ここで、筆者が活動する飲食店ユニオン(首都圏青年ユニオン飲食業分会)が相談を受け、申請に協力した事例を3つ紹介したい。
Aさんは学生アルバイトとして、ステーキ屋さんでホールスタッフとして働いていた。週2日~3日のシフトで勤務し、月収は約6万円ほど。そんな中、2020年4月に緊急事態宣言を受け、「当面の間、店舗を休業する。状況が戻り次第、連絡する」と店長から休業の指示をされた。
しかし、1ヶ月近くが経過し、店舗が再開しても、店長からの連絡はなく、状況確認の連絡を入れると「シフトは足りている」と言われてしまった。Aさんは納得がいかず、休業補償と復職を求めたが、会社からは拒否された。
その後、飲食店ユニオンに相談し、会社に交渉を申し入れたところ、4月から10月までの期間、休業支援金・給付金を利用し、休業補償を行うことで合意した。その結果、約40万円の休業補償を得ることができた。