映画『新解釈・三國志』の“容姿いじり”はなぜ生まれたのか

『50回目のファーストキス』の“ゲイいじり”の問題

 福田雄一監督の過去作にも、問題となるギャグがあった。例えば、2018年の日本リメイク版『50回目のファーストキス』では、“ゲイいじり”があったのである。  『50回目のファーストキス』のおける太賀(現在は仲野太賀)演じる筋トレばかりしている青年は、その父親役の佐藤二朗に、ことあるごとに「お前は実はゲイなのか?マジなのか?」などと疑惑をかけられ、当の太賀は山田孝之演じる主人公に向かって「胸毛がほしい」などと言ったりする。  さらに、終盤で太賀は山田孝之に強いハグをして、「アイミスユー」と言いながらキスをしようとしたために、佐藤二朗は彼をビンタする。しかも、その直前の太賀からのプレゼントのやりとりに対して、あろうことか「気持ち悪いな」と言い放つシーンまでもがあった。

ゲイやオタクは「気持ち悪い」のか

 オリジナル版の2004年のアメリカ映画『50回目のファースト・キス』には、この“ゲイいじり”のギャグはない。プレイボーイである主人公がゲイであると偽ったり、逆にゲイではないと言い張るというシーンはあるものの、この筋トレばかりしている青年がゲイとして主人公にモーションをかけるというのは、このリメイク版で付け加えられたものだ。  シネマトゥディ特集記事に「(太賀は)元々は姉を支える真面目な役柄だったのだが、クランクインしてすぐ、父親役の佐藤とのアドリブのかけ合いを見た福田監督が設定を変更し、個性的なキャラが誕生した」とあるので、おそらくこのゲイいじりは脚本にはなく、現場の“思いつき”で生まれたのだろう。  このギャグは、ゲイの青年からのアプローチを「気持ち悪い」という枠にはめ込むという、言語道断なものとしか思えない。パートナーを見つける努力をしている、あるいは意中の相手に告白をしようとしているゲイの方が、これを観たらどう思うのだろうか。これをギャグとして映画に無神経に取り込み、関係者の誰もが取り下げなかったというのは根深い問題だ。  さらに、今年2月に公開された『ヲタクに恋は難しい』も、オタクを「気持ち悪い」ものとしてカテコライズしてしまうという、偏見と蔑視がありありと見えていた。特に、終盤に主人公がとある“勘違い”をする流れはそれ自体が意味不明であるし、実際は多様であるはずのオタク像を、1つの型に押しはめてあざけ笑っているようにしか思えず、原作マンガに対してもひどく不誠実な内容だった。こうした作り手の意識が、『新解釈・三國志』の酷いギャグに繋がっていったのだろう。
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福田雄一監督自身に変わってほしい
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