映画『新解釈・三國志』の“容姿いじり”はなぜ生まれたのか

城田優が「中途半端な外人顔」といじられる

 さらに酷いと断言できるのは、城田優演じる呂布に対して、渡辺直美演じる貂蝉が「私はその中途半端な外人顔も好きよ!エスパニョール!」と言い放つことだ。  こちらも、物語の流れだけを見れば「董卓と呂布を仲違いさせるために嘘で酷いことを言う」という理屈が通る。だが、この時の渡辺直美は、散々ライバルである董卓からの悪口を告げた後に「“私は”その中途半端な外人顔も好き」と、自らが良いことであるように“フォロー”を入れているのである。つまり物語上は全く必要のないセリフであり、やはり城田優の見た目を短絡的にいじって笑うというギャグにしかなっていない

「外人」という差別用語

 また、当の城田優は、自らが25年ほど前に毎日のように「外人」と呼ばれていたこと、「これだけ時代が変わったにも関わらず、もし、いまだに学校等で、ハーフの子どもたちが”外人”と呼ばれているのだとすると、すごく悲しい」というツイートをしていたことがある。  言うまでもなく“外人”そのものが差別用語であるし、それに対して悩みを抱えていた城田優は、どういう気持ちで「中途半端な外人顔」というセリフを聞いていたのだろうか。  しかも、日本人と台湾人のミックスである渡辺直美にそれを言わせるというのは、どういう神経をしているんだ、と批判的にならざるを得ない。  その他にも、序盤に大泉洋演じる劉備に対しても「顔が中途半端だ」といじるシーンがあった。残念ながら、脚本も執筆した福田雄一監督は”容姿いじり”をただ笑えるギャグとしてしか認識していないのだろう。
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『50回目のファーストキス』の“ゲイいじり”の問題
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