大学入試改革の1年を振り返る。記述式の問題は結局どうなったのか

新たに記述式を勉強する人の数

 次に、「共通テストに記述式の問題を入れることで、新たに記述式の勉強をしなければならなくなる人」を大学募集人員レベルで考えてみましょう。このような人は、 (a)共通テストのみで合否を判定される人 (b)「共通テスト」と「記述式のない個別試験」の両方で合否を判定される人 です。母数は先ほどと同じ603649人です。  (a)に相当する人は、先ほどの説明通り53216人(全体の8.8%) です。  (b)については直接の資料はありませんが、次のようにおおよそが推測できます。これまでのセンター試験と個別入試を併用する試験の募集人員は、全体で111483人(18.5%)ですが、そのほとんどが国立大学(77596人)と公立大学(21902人)で、私立大学では11985人です。このうち国立大学は93%以上、公立大学は85%以上が記述式問題をすでに課していることを考えると記述式問題を解かない人は多くても21000人程度です。  つまり(a)、(b)を合わせると75000人以下ですから共通テストに記述式を取り入れることによって、これまで記述式問題の勉強をしなかった人がするようになる募集人員は12~13%程度ということになります。(実際には複数校を受験する人が多いので、この12~13%よりも小さくなります)  この12~13%の人に記述式問題を課すんだという考えもあるかもしれませんが、それによって膨大なコストがかかることを考えると、もっと別の方法を考えた方がよいのではないかとなります。

記述式に関する主な意見の流れ

 大学入試に記述式問題の出題が大切であることは、委員のほぼ総意です。しかし、それを共通テストの枠の中で出題することは、第19回の「大学入試のあり方に関する検討会議」でほぼ否定されています。  それでは、個別試験で出題するのはどうかということになります。個別試験に舞台を移すと、国公立大学側と私立大学側で立場が異なることが鮮明になります。国公立大学側は「しっかりとした記述」をやりたいと考えており、実際、旧帝大などでは丁寧な採点も行われていて「しっかりとした記述」はほぼできている状態であると考えています。  これに対し、私立大学側は複数回の入試を行う大学が非常に多く、なおかつ限られた人員と短い採点期間などの問題、そして委員の発言にもありましたが、しっかりと採点して合格させてもたくさんの受検者が「逃げてしまう」こともあり、「国立大学と同じようなことはできない」という主張をします。それは、大人数の採点業務だけでなく、作問についても当てはまることなどから、国立大学と同じ基準で考えないでほしいと主張します。 【国公立大学】 記述式の出題は大切だ ⇒「現時点で出題している」(全体の86.0%) ⇒特に問題があるとは感じられない ⇒共通テストも現状でよいのではないか 【私立大学】 記述式の出題は大切だ ⇒現時点で出題している大学もあるが、出題・採点などで厳しい大学もある ⇒理想はわかるが、国立大学と同じ基準で考えてもらうと困る  結局、私立大学の入試でも記述式の問題を出すべきという議論になると、「私立大学の入試は、自由にやらせてほしい。入試はこうあるべきと決めつけないでほしい。」と主張します。  さらに、私立大学側の個別試験での難しさとして、入試日程のきつさも度々あげられます。それは、限られた期間で複数回の試験の実施がかなり厳しいものであることです。  であれば、共通テスト頼みの意見もありますが、共通テストについては、大学入試センターの山本理事長がここ数回の会議で「大学入試センターにそのような余裕はない」と悲鳴をあげている状況です。大学入試センターとしては、現状の6教科30科目も問題視しており、今後スリム化をはかりたいとのことです。
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今後の大学入試における「記述式」の問題について
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