日本語ラップ界の異端児。般若の壮絶な過去と今なおトガり続ける理由

何かが破綻しているし、弱いからこそ続けられる

般若

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 ラップと出合ってから25年、常に日本語ラップ界をけん引してきた。若かりし頃は誰もが社会に対して何かしら反骨精神を持っているが、社会に揉まれて角が取れ丸くなっていくものだ。そうならずに、今なおトガり、“傾かぶき”続けている般若。そのワケとは。 「最近わかったんですが、俺、人間として何かが破綻しているんすよ。こないだもラーメン屋の店内にある“親切”という標語を見ていたら、『ラーメン屋が、どうしてそのフレーズを掲げる必要があるのか』と思って、マジでムカついて。殺意すら湧きましたからね」  ある意味、こだわりが強く、純粋すぎる般若だが、SNS上に氾濫する批判的な言葉に対しては意に介さない。 「SNSで顔の見えないヤツが攻撃してくる言葉を真に受けてはダメ。その世界が人生のすべてじゃないから、言葉に精神を追い詰められて死ぬのはもったいない。俺のところにも『死ね』とか『早く消えろ』とか毎日バンバンくるけど、そんな言葉、心の奥には響かない。それより親や友人からかけられる一言のほうが大切。人を傷つける言葉より生かす言葉で溢れてほしい

長渕剛は「俺の心の隙間を埋めてくれた存在」

長渕生まれ ヒップホップ育ち」とリリックにあるように、般若もまた、ロックミュージシャン・長渕剛の音楽に心を救われた一人だ。 「本当の強さって優しさのこと。長渕さんは、父親がおらずいじめでねじれた感情だけが溜まっていた俺の心の隙間を埋めてくれた存在。そんな詞を書く長渕さんは間違いなく優しい人だと思う。といっても彼の背中を追うつもりはない。俺は優しくないし弱い。だけど、弱いことをわかってて表現しているのが強み。強かったら何もしなくていいんだから、『俺は強い』とか言っているヤツは続かないっすよ。後輩にも俺についてこいとか思ってないし」  社会や人間のダークな面がむき出しとなった言葉が並ぶ般若のラップは、曲解されて誤解を生みやすい。 「自由と責任は背中合わせ。自由という言葉から漂う“楽さ”だけに憧れるのではなく、その裏にある責任も背負って生きよう。そういう本当の意味で人生が豊かになる自由さを伝えたい。あと噓抜きで、サラリーマンやっている人たちのことを尊敬している。会社の枠組みの中で、俺の大っ嫌いな上下関係に支配されながら歯を食いしばってさ。そんな気合の入った人たちに俺の曲が届いてくれたら嬉しいっすね」  眉をひそめるような卑猥で暴力的な言葉でも、彼の口を通すだけで、そこには言霊が宿り魂を揺さぶられるのだ。 『その男、東京につき』 ’20年/日本/1時間54分 監督・編集/岡島龍介 出演/般若、Zeebra、AI、t-Ace、長渕 剛(特別友情出演)ほか 配給/REGENTS 12月25日より全国順次公開
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魂を揺さぶるラッパー・般若の名リリック&パンチライン
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