ニセNFパンフレットの1ページ目に記載されている、京都大学教授の藤井聡氏の推薦文にはこう書かれている。
「本学は正式にNFを取りやめる決定が下されましたが、本学が発出しているガイドラインの範囲内での学生生活はもちろん、本学として禁止するものではありません。そして、京都大学の校風である学問における自由、そして学問の多様性実践性総合性を鑑みるなら、その範囲での活力ある学生活動は大いに奨励されて然るべきものであります。
『ニセNF』なる企画が、感染拡大防止について本学が求める十分な対策を図りつつ、旺盛な学生活動の一プロジェクトとして大いに盛り上がることが、学問の本来的な多様性実践性総合性を踏まえた京都大学の学問の自由の気風を大いに継承しつつそれを加速し、活性化し、次世代へと継承されていく機会となりますことを、心から祈念致します」
現役の京大教授がこう記すように、ニセNF自体はルールに違反するようなイベントではない。むしろ、大学生が理念をもってゼロから大きなモノを作り上げたという点で、旺盛な学生活動の模範とも言える。その意義は、コロナ禍で自粛ムード一色の社会に風穴を開けるようなイベントだったというだけではない。
既に述べた通り、「自由の学風」と言われた京大ですら急激な管理強化が進んでいる。社会全体が管理社会化していると言われるが、かつて「学問の自由」の名の下に自由な学生の文化活動が許された大学も窮屈な場所になりつつある。
その中で、上から押し付けられたものではなく学生がゼロから生み出したニセNFの成功は「自由がないなら、自分たちで別の自由を生み出せばいい」という例を示してくれている。学園祭の予定日程での取りやめ発表から、ニセNF開催までたったの4か月。ニセNF実行委員は誰からもお金をとることなく、運営者や参加者の友人からの機材や宿泊所の提供、カンパなどの協力によって開催にこぎつけた。コロナ禍で何も出来ない状況に陥ってる大学生でも、これだけのことが実現可能なのだ。今の時代に閉塞感を感じている若者や大学生に、大きな希望と刺激を与える存在だったといえる。
<取材・文/茂木響平>