香港の若き活動家・周庭に10か月の実刑判決。中国政府による見せしめのための重すぎる処罰

 12月2日、香港の民主化運動の前線で活躍し続けた周庭ら3人の若き活動家が実刑判決を受けて即日収監された。なぜ彼らは過剰な罪と刑を負わされたのか? 6月の国安法施行で急変する香港の実情を追った。

民主化運動に青春を捧げた女神が判決を受けて涙……

周庭

11月23日に有罪が確定し、勾留を覚悟した周庭(左)、林朗彦(中央)、黄之鋒(右)の3人は裁判前に会見した。写真/時事通信社

 香港の民主化の灯は絶えてしまうのか……? 12月2日、20代の若き活動家に下された判決が波紋を呼んでいる。 「民主の女神」として知られる周庭(アグネス・チョウ)と’14年の雨傘運動で主導的役割を果たした黄之鋒(ジョシュア・ウォン)、そして2人が所属した民主派政党「香港衆志」の元主席・林朗彦(アイバン・ラム)の3人に、重すぎる刑が言い渡されたのだ。周庭は10か月、黄之鋒は13か月半、林朗彦には7か月の禁錮刑が下され、即日収監となった。  3人が問われたのは、警察本部を包囲した昨年6月21日の無許可集会に関与した罪だ。市民を「扇動」したうえで集会に「参加」したと断罪されたのだ。が、参加はまだしも「扇動」は完全な濡れ衣だ。当日の集会に居合わせた民主派の元香港立法会議員が話す。 「その日、周庭はメガホンを持った黄之鋒の隣に立っていましたが、スピーチはせず、ただ参加しただけ。黄之鋒は抗議者が集まりすぎて収拾がつかなくなったことを懸念して『このまま包囲を続けるの?』と問うたら、一部の強硬な抗議者から『集会を解散させるつもりか?』とバッシングを浴びていました。つまり、扇動するようなリーダーシップをまったく発揮できていなかったのです」

司法の判断までもが偏る傾向にある

 当然、3人は無実を訴え続けたが、周庭は今年8月に一転して罪を認めている。黄之鋒と林朗彦も11月23日に罪を認める姿勢に転換した。背景には減刑を狙った法廷戦術があったという。彼らをよく知る中国近代史専門の倉田明子・東京外国語大学准教授が話す。 「香港政府に対する批判をも政権転覆罪で取り締まることのできる国家安全法が今年6月30日に施行されてから、明らかに民主派への締め付けが厳しくなりました。立法会で親中派と衝突した民主派議員は相次いで議事妨害などの罪で逮捕され、警察官に卵を投げつけた罪などで起訴された男性には禁錮1年9か月が言い渡されました。  一方で、4月の話になりますが、市民を刀で刺した親中派の男性には3年9か月の禁固刑を言い渡しながら、裁判長が『罪を反省し、被害者を心配している被告は高尚だ』と同情する姿勢を示したことが反発を呼びました。このように司法の判断までもが偏る傾向にあるため、3人は罪を認めて減刑を求める方針に転換したようです」  なかでも周庭については当初、社会奉仕活動で済むとみられていた。初犯のうえ、早くに罪を認めていたからだ。雨傘運動を主導した罪で黄之鋒が初めて起訴されたときも、一審では80時間の社会奉仕活動を命じられている。 「禁錮刑が科されたとしても、判例に従って情状酌量が認められ、執行猶予がつく見立てだった」(倉田氏)という。
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「判決が出てからは堰を切ったように泣きだして…」
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