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本邦におけるCOVID-19エピデミック第3波(秋の波)は、予測の難しい起点(第3波エピデミックの開始点)自体は半月から一月の揺らぎを生じましたが、一旦発生するとノーガードどころか
GO TOなどのウイルス拡散支援政策によって本邦の津々浦々にまで蔓延した結果、気温の低下に伴って科学的予測通りの進捗を見せています。
本邦は既に日毎新規感染者数でフィリピン、インドネシアを抜き、ミャンマー、中国、モンゴル以東の東部アジア・大洋州諸国の中ではワースト3となっています*。
〈*本邦は報告遅れなどの統計の乱れを生じており11/25には大幅な過少報告が生じ、見かけ上インドネシアとほぼ同率3位となっている〉
東部アジア・大洋州諸国(謎々効果国)における百万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm 7日移動平均)
可読性が悪くなるのでシンガポールを除いている
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筆者は、
IHME(保健指標評価研究所)による中期・長期予測を代表に、
LANL(ロスアラモス国立研究所)や
ICL(インペリアルカレッジ・ロンドン)による評価と短期・中期予測を代表に紹介し、その読み解き方を解説してきましたが、ぎりぎりで時期にかなった記事になったと自負しています。
これらの予測と分析は、分析については現状把握にたいへんに有用ですが、予測については、常に指摘しているように、本邦でモデル作成されたものでないことから
長期予測は傾向の目安でしかないこと、そして予測全般で、概ね二週間前までの死亡・感染者の動向をもとにつくられている為、トレンド(傾向)の大きな変化への追従には必ず遅延が発生する事に注意せねばなりません。
特に長期予測であるIHMEによる予測は、合衆国以外については毎週の発表ごとに大きく修正が為されるので「当たった」「外れた」という見方と評価自体が誤っています。
今回から、IHME、LANL、ICLの評価と予測についてご紹介した上で解説して行きこの先の市民としての備え方の一助とします。
なお、11/18に
Googleが本邦についてのエピデミック予測を公開しましたが、発表されたものをざっと見たかぎりでは、「これはまだ使えないな」という感を持ちました。この手の自動学習型AIによる予測は短期間で改良され実用性が向上しますので今後も注視して行きますが、今回は評価から外します。筆者は、年末までにはGoogle予測も実用域に達するのではないかと考えています。そもそも本邦でこのような評価・予測が広く公開されていない事が異常です。
これまでも繰り返し紹介している様に合衆国では、現在開店休業状態ですがホワイトハウス新型コロナウィルス対策タスクフォースがIHMEによる予測を3月からメディア向けブリーフィングで用いるなど、日常的にTVや新聞でエピデミック予測を目にします。
IHMEの本邦に関する予測は、8月の第2波エピデミック収束後下方修正が続き、
8月末の、”12/1迄に62,129人が死亡する”と言う予測が、10/22更新では2021/2/1迄に4千人台の死亡まで減少していました。これは、
単純に「秋の波」到来が遅れていた為です。
本邦への秋の波=第3波エピデミック到来がIHMEによって確認されたため、
10/29更新の予測ではいきなり2021/2/1迄に11,398人死亡と言う予測の大幅な上方修正がありました。筆者の考える暫定的な第3波起点は
9/23-26*ですので、エピカーブの傾向が増加へ転じてから5週間の遅延ですが、9/23から10/13までは非常に緩慢な変化でしたので傾向の判定が遅れても仕方ありません。IHMEの長期・中期予測は、実際のエピカーブのトレンド変化に少なくとも3〜4週間遅行することは
9/29公開記事で説明した通りです。
〈*前回、暫定的に10/9を本邦第3波の起点としたが、ロスアラモス国立研究所(LANL)とICL(インペリアルカレッジロンドン)による本邦COVID-19エピデミックの評価と報告から、筆者は本邦における第3波エピデミックの起点を9/23-26と見做している〉
さてその後、本邦の状態が急速に悪化する中、IHMEは、大統領選により11/6を欠測として11/12および11/19に新たに予測を更新しました。但し本邦について表面上は、11/12迄しか更新されていません。これはとても不安になることで、いろいろ検討しましたが、本邦は慢性的にデータの公開が遅れ気味であり、IHME11/19更新情報には一部データが間に合わなかったのではないかと推測しています。一方、Excelファイルで入手できる数値データでは、本邦についての11/19更新の予測を約10%の上方修正として記載されています。このことについてはIHMEに問い合わせています。