国分寺以西を舞台にした野球少女マンガ『高校球児ザワさん』から、東京西部の変遷を読み込む
東京なのにどこか東京でない不思議なエリアの物語
『高校球児ザワさん』から読み込む東京西部の変遷
さて、玉川上水駅の西側をしばらく歩くと、1964年から1966年にかけて5260戸が建設された、当時としては東京都内最大だった都営団地があります。敷地面積は55.3ヘクタール、周辺には商店街や市場もでき、1965年の人口1万4069 人から1970年の人口4万1275人へと激増しました。ただ現在は団地の老朽化も進み、建て替え工事が行われています。
この周辺も高度経済成長期に大きく発展し、しかし近年の都心回帰現象の陰で将来像を模索している最中なのかもしれません。多摩ニュータウンを始めとして、東京の西部が郊外化された時代が確実にあったということです。そして現在に至る郊外都市が形成されていきました。
『高校球児ザワさん』を通じて、メディア等があまり着目しない東京西部の変遷を読み込んでいくことも可能でしょう。マンガはときにその対象になっている地理的エリアを知る契機にもなります。
最終回で、都澤理紗は見事に大学入試に合格しました。彼女は合格発表を金髪、野球のユニフォームのいでたちで見に行きます。大学では女子も硬式野球部の選手として試合に出られるので、彼女はそこで野球を継続するのでしょう。受験番号を探す彼女の視線の先には「文科三類」合格掲示板と描いてありますので、東京大学に合格したようです。
【野球マンガの聖地を巡る旅 第2回】
<文・写真/増淵敏之>
法政大学大学院政策創造研究科教授。専門は文化地理学、経済地理学。著書に『ローカルコンテンツと地域再生』(水曜社)、『湘南の誕生』(リットーミュージック)、『伝説の「サロン」はいかにして生まれたのか』(イースト・プレス)など多数。
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