国分寺以西を舞台にした野球少女マンガ『高校球児ザワさん』から、東京西部の変遷を読み込む

リアリティのある野球少女の日常

野球少女イメージ 女子の野球選手が高校野球に登場してから、彼女たちがマンガの中にも登場することが多くなりました。日本の野球マンガは時代の流れによってさまざまに多様化を遂げてきましたが、「女子と野球」というテーマも今後いっそう活発化するに違いありません。さて、そのなかでも『高校球児ザワさん』は「フェチすぎる野球マンガ」として、連載当時に注目を集めました。  この作品は三島衛里子の初めての連載マンガでした。2008年に「ビッグコミックスピリッツ増刊号Casual」(小学館)に読み切りとして掲載され、その後「ビッグコミックスピリッツ」(同社)に2008年から2013年まで連載されました。単行本としては全12巻になります。2011年にはサムライジャパン野球文学賞大賞も受賞しています。  作品もセリフも少なめなのですが、制服の下にアンダーシャツを着込む、無造作にタオルで顔を拭くなどの、野球少女ならではのディテールへの言及がなされています。練習風景や試合風景も多くは描かれず、リアリティのある野球少女の日常が淡々とそしてリアルに描かれています。  物語は、西東京にある野球強豪校である日践学院高校硬式野球部を舞台に、唯一の女子選手・都澤理紗の日常を各話8ページほどの一話完結形式で描かれています。主要人物や描かれる内容は野球部のことが中心で、各話は独立していて全体を通じての物語にはなっていません。しかし時間軸は存在するので、最終話は彼女の大学受験のエピソードになっています。

国分寺以西が舞台となった、数少ない野球マンガ

高校球児ザワさん 彼女は三鷹市の古びた木造平屋に、祖父、兄とともに暮らしています。兄の耕治は同じ野球部のエースで、卒業後はドラフト1位でプロ野球に進みます。しかし兄は在学中、野球部の仲間にも知られずに鉄道研究会などのオタク系クラブにも所属しています。自宅の場所は作品中では「下蓮雀」と表記されていますが、おそらくモデルは実際にある地名「東京都三鷹市下連雀」なのでしょう。  高校の所在地はJR昭島駅からバスとなっていて、作品の舞台は三鷹から奥多摩方面の範囲になります。それが主人公の日常の生活圏と解釈できるかと思います。
武蔵増戸駅旧駅舎

武蔵増戸駅旧駅舎(photo by Kouchiumi via wikimediacommons (CC BY-SA 3.0)

 もちろん作中にJR三鷹駅やJR立川駅のホームが登場したり、練習試合のある野球場に向かうのに、JR五日市線の武蔵増戸(むさしますこ)駅を利用したりもします(作中に登場するのは旧駅舎)。いわゆる東京を舞台にした野球マンガで、国分寺以西が舞台になった作品は決して多くはありません。
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東京なのにどこか東京でない
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