時事通信社
前回記事で取り上げたグループインタビュー から4日後にあたる10月9日、
菅義偉首相はまたしても
グループインタビューと呼ばれる閉鎖的なメディア対応を実施。前回同様、質問は代表3社(今回は毎日新聞、朝日新聞、時事通信)のみという状況で約30分間にわたって行われた。記者からの質問内容は当然ながら日本学術会議への人事介入の問題が大半を占める中、菅首相の回答に筆者は3つの違和感を抱いた。本記事では、その3つの違和感を解説していく。
まず
1つ目の違和感は、グループインタビュー の終盤に菅首相が「
任命前の105人のリストは見ていない」というこれまでの説明の前提を覆す発言を初めてしたことについて。その一方、「
総合的・俯瞰的な観点でふさわしい方を任命した」「
推薦された方をそのまま任命してきた前提を踏襲してよいのか考えてきた」という説明も4日前のグループインタビューと同様に継続して述べていた。これらの発言は
完全に矛盾している。
菅首相が
「任命前の105人のリストを見ていない」のであれば、「総合的・俯瞰的な観点でふさわしい方を任命すること」は菅首相には不可能であるし、そもそも
「推薦された方をそのまま任命してきた前提を踏襲してよいのか考える」必要すらない。しかも、これらの完全に矛盾する発言がわずか30分間のインタビューの中に共存していた。
これらの矛盾する主張が、30分の間にどのように行われたのか具体的に見ていきたい。
〈*発言後の()内の時間は、
西村カリン氏が
SoundCloudで公開中の音声の時間を示す。また、全文文字起こしは
望月優大氏が
noteで公開している〉
<「総合的・俯瞰的な観点でふさわしい方を任命した」という主張の具体的発言>
菅首相:「この総合的・俯瞰的活動を確保する観点から、日本学術会議にその役割を果たしていただくために、まあふさわしいと判断をされる方を任命をしてきました」 (6:45)
菅首相:「総合的・俯瞰的活動、(中略)まあこうしたことを念頭に判断をさせていただいているということです。」 (14:13)
菅首相:「総合的・俯瞰的な活動、(中略)こうしたことを念頭にこれやはり判断をしていく」(18:23)
<「推薦された方をそのまま任命してきた前提を踏襲してよいのか考えてきた」という主張の具体的発言>
菅首相:「推薦された方々がそのまま任命されてきた前例を踏襲をしていいのかどうか。まあそうしたことを考えてきた」 (1:52)
菅首相:「推薦された人を、そのまま任命されてきたことについてはですね、これまでそうした前例を踏襲をして良いのかという思いがあって」 (13:57)
<「任命前の105人のリストは見ていない」という主張の具体的発言>
記者:「最初に案をご覧になったのはいつ誰からの報告だったんでしょうか。その時点では105人の名前が載っていたんでしょうか」 (26:52)
菅首相:「私が最終的に決済を行ったのは9月28日です。で、会員候補のリストを拝見したのはその直前だったと記憶しております。まあその時点では、
現在の最終的に会員となった方がそのままリストになっていたという風に思ってます。」(27:33)
記者:「
総理がご覧になった段階ではもう99人だったという」(27:56)
菅首相:「あの、そういうことです。あの、任命するリストでありますから」(27:59)
記者:「任命するその前の推薦段階でのリストはご覧になってない?」(28:05)
菅首相:「
見てません」 (28:07)
これらのやり取りを見ると、開始から18分頃までは一貫して、
「総合的・俯瞰的な観点でふさわしい方を任命した」「推薦された方をそのまま任命してきた前提を踏襲してよいのか考えてきた」という従来の説明に沿った回答を続けてきたのに、終盤の27分頃に突如として、「
任命前の105人のリストは見ていない」という趣旨の発言をしている。さすがにここまで論理破綻した原稿が事前に用意されていたとは考えにくいため、27分頃の連続した質問に相次いで回答する中で菅首相は咄嗟に「現在の最終的に会員となった方がそのままリストになっていた」「(任命前のリストを)見てません」と嘘をついてしまったのではないか。