時事通信社
学問の自由の侵害もさることながら、法律を平然と無視し、立憲民主主義を蹂躙する暴挙であるという声が多くの有識者からあがり、大きな問題になっている日本学術会議への人事介入。この問題について
菅義偉首相はほとんど語ってこなかったが、2020年10月5日に「
グループインタビュー」と称した記者との質疑応答において、北海道新聞の記者がこの問題を2問にわたって質問。菅首相はようやく自らの見解を述べた。本記事では、この2問の質疑を一字一句漏らさずにノーカットで信号機で直感的に視覚化していく。具体的には、信号機のように3色(
青はOK、
黄は注意、
赤はダメ)で直感的に視覚化する。(※なお、色表示は配信先では表示されないため、発言段落の後に( )で表記している。色で確認する場合は本体サイトでご確認ください)
質問に対する菅首相の回答を集計した結果、下記の円グラフのようになった。
<色別集計・結果>
●菅首相:
赤信号11%
黄信号50%
青信号38%
灰色1%
*小数点以下を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはならない
今回の質問は、首相の見解を問うような緩い聞き方が含まれていたため、青信号の割合が4割弱と比較的高くなっている。ただ、赤信号と黄信号も6割強を占めている。いったいどのような質疑だったのか詳しく見ていきたい。
まず、北海道新聞の記者は、
日本学術会議への人事介入となっている主な問題点(任命拒否の理由、学問の自由の侵害という指摘への考え、任命拒否された6名が政府提出法案に反対したこととの関係、法律解釈の変更など)について質問する。その質疑は以下の通り。
北海道新聞サトウ記者:「日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命を拒否した理由は何でしょうか。あの、政府は人事の話として説明を拒んでいますが、任命拒否は過去にない対応で学問の自由の侵害との指摘がありますが、どうお考えでしょうか。また6人が、あのー、政府提出法案に反対の立場だったことが理由なのでしょうか。政府は1983年時点で学術会議の推薦を受けて形式的に任命するとの立場でしたが、法律解釈を変更したのか。あの、その変更に問題はないのか、お尋ねします。」
菅首相:「
まあ、これまでも、おー、官房長官から、あー、会見で説明してますように日本学術会議については法に基づいて内閣法制局にも確認の上で、学術会議の推薦者の中から総理大臣として任命しているもので、(
黄信号)
個別の人事に関することについて、コメントは控えたいと思います。(
青信号)
まず、その上で申し上げれば、日本学術会議は政府の機関であり、年間約10億円の予算を使って活動していること。また任命される会員は公務員の立場になること。また会員の人選は推薦委員会などの仕組みはあるものの、現状では事実上、現在の会員が自分の後任を指名することも可能な仕組みとなっていること。(
黄信号)
こうしたことを考えて、推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲してよいのか考えてきました。(
青信号)
日本学術会議については省庁再編の際にそもそも必要性を含めて、その在り方について相当のこれ、議論が行われ、その結果として総合的・俯瞰的な活動を求めることになりました。(
黄信号)
まさに総合的・俯瞰的活動を確保する観点から今回の任命についても判断をさせて頂きました。こうしたことを今後も丁寧に説明をしていきたい。このように思います。(
青信号)
また、なお過去の国会答弁。これは承知しておりますが、そもそも当時の学会の推薦に基づく方式から現在は個々の会員の指名に基づく方式に変わっており、それぞれの時代の制度の中で法律に基づいて任命を行っているという考え方は変わっていません。(
赤信号)」
まず、1段落目、3段落目、5段落目は
日本学術会議に関する周知の事実を述べているだけのため、
黄信号とした。
7段落目は以下のように微妙に論点をすり替えており、
赤信号とした。
【質問】法律解釈の変更
↓ すり替え
【回答】人選方式の変更
また、今回の質問内容は菅首相の見解を問うような緩い聞き方が含まれていたため、2段落目、4段落目、6段落目は、
青信号としたが、いずれも
実質的にはゼロ回答に等しい。
●
2段落目
個別の人事という理由で、回答を拒否
●
4段落目
前例を踏襲すべきか考えてきたと述べただけ
●
6段落目
総合的・俯瞰的活動を確保する観点で任命を判断したと述べただけ