災害時に困るのは、シャワーを浴びたりお風呂に入れなかったりすること。生死には直接関わらないが、精神的になかなかキツい。実際、去年の台風で体感したことだ。
さて、このポータブル電源でお風呂のお湯を出すことは可能なのか? ドキドキしながら給湯器のコンセントをポータブル電源に繋いで、お湯の栓を回した。すると……蛇口から出る水が徐々に熱を伴ってくる、見事に熱いお湯が出たじゃんか! 嬉しい、嬉しい。これで停電になっても何も困らないんだ。仲間や近所の方にも使ってもらえる!!!
ポータブル冷蔵庫
さらにはポータブル冷蔵庫も購入してみた(1万円くらい)。25リットル収容できるので、500mlペットボトルが20本分入る。保温もできるので麹や甘酒や納豆も作れる。暑い時期の災害時、寒い時期の災害時、これで少しは快適さが保てるし、食糧保存に有効だ。
匝瑳市に移住してきた内山隼人さんは、ダンスユニットとして活躍してきたワールドオーダーの一員だ。その内山さんも先のワークショップに参加したのち、オフグリッド生活に進化した。容量の大きなポータブル電源を購入し、井戸水ポンプや洗濯機も動かす。彼が Facebook にこう書いている。
「このワークショップをきっかけにわが家も急速にソーラー発電が始まり、電灯、スマホやパソコンの充電、扇風機、井戸水ポンプ、洗濯機、給湯器、充電式の電動工具が使用できます。非常時の為と思ってポータブル電源を購入しましたが、普段時もかなり使っています。
東日本大震災の後からやりたいと思っていたオフグリッドにはまだ足りないけれど、降り注ぐ太陽のエネギーで電気を賄うというのは、とても楽しいし、気持ちがいいです。この自然エネルギーを使わないなんて、もったいない!
止まらない環境破壊を止めるためには、まずは自分のライフスタイルを変える必要があるという思いもあって、田舎に引っ越しました。原発のない世界を自分の生活からつくっていく」
同じワークショップに参加しても、都心から来た人だと存分に活かせないという。太陽光パネルを置く場所がないからだ。特にマンションやアパートでは、小さなベランダがあるだけだ。太陽光そのものが建物に阻まれて存分に届かない場合もある。田舎は高い建物が少ない分、日照が十分に担保されている。
俺が住む匝瑳市は、海から平野部が広がり、内陸部もせいぜい50〜100m未満の丘陵であり、3階以上の建物はほぼないので、空が広くて開放的で日照率も極めて高く、日照時間も長いのだ。
コロナ禍のこの数か月で東京都への流入人口が減り、とうとう流出人数のほうが多くなった。大阪でも、移住志向の人が急増しているというデータも出ていた。
「都市を田舎にする」という俺の夢に、世の中が動き出した。地方分散へ、自立型分散へ、オフグリッドへ。時代を変えていく一人になろう。
【たまTSUKI物語 第28回】
<文/髙坂勝>
30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar
「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO
「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に
『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。