資源戦争や、電力業界から自由になれる「オフグリッド」
このワークショップを持ちかけてくれた東光弘さん。パネルの通電の確認作業を参加者に教えている(写真/山口勝則)
さて、話を戻そう。東さんが電話でこう話してくれた。「ソーラーシェアリング で使っていたB級品の太陽光パネルが大量に出たから、家庭で簡単に電気を発電できるワークショップをしないか?」と。
ありがたいご提案に、迷う必要は皆無だ。もちろん二つ返事で「ぜひやりましょう」と返答した。
地域で電気の自立を目指すだけでなく、個々の家も電気で自立していく。災害時だけでなく、普段から自宅で電気を作り、自家消費する。それはこれからの未来に進んでいく雛形になるはずだ。しかも高額な出費をせずにできる仕組みとして!
「オフグリッド」という言葉が世界で広がりつつある。
オフグリッドとは、電力会社の送電網につながっていない状態、あるいは電力会社に頼らずに電力を自給自足している状態のことを言う。
電気がなければ、経済も事業も暮らしも動かない。だから世界の人々は電力業界やエネルギー資源業界に牛耳られてきたと言っても過言ではない。
例えば、石油資源などがあるところは必ず戦争紛争がある。中東の戦争の歴史を見れば、その裏に石油資源獲得が絡んでいることは明白だ。
エネルギーのために人々のいのちが犠牲にされてきた事実。政治ですらも、そのピラミッド縦型従属構造の中に組み込まれている。
再生可能エネルギー普及を目指してきた俺たちを牽引してきた言葉がある。
「石油による戦争から、太陽による平和へ」。そう、巨大化したピラミッド縦型従属構造から自由になれるのが、オフグリッドなのだ。
石油も石炭も原子力も使わない、大企業にも権力者にもつながらない、自立した電力
参加者自らがケーブルの被覆を剥がす作業(写真/山口勝則)
ということで、東さんからのご提案のお陰で、台風到来前の8月のはじめに実現した
「普段時も災害時も、いちばん近道のオフグリッド」と題したワークショップには、35組が参加してくださった。
少々劣化した70ワット太陽光パネル2〜3枚を参加者に配り、コードなどの接続部を自分で作る。参加者が自己負担で購入したポータブル電源(アウトドアなどで使う人が多い)に繋いでもらえば、それだけで電気を発電し、自宅で使えるというわけだ。
ワークショップを終えてオフグリッドに踏み出す参加者の、清々しい笑顔
ポータブル電源にはAC(普通のコンセント)出力やDC出力(自動車のシガーソケットと同じ)とUSBの出力端子があり、難しいことはない。家電との接続は普段と同じ、ただ差すだけだ。
我が家では、4万円くらいのポータブル電源を購入。2枚のパネルを南向きに並べてポータブル電源に繋ぐと、夏の晴れた日なら1日から1日半で充電容量いっぱいになる。そのポータブル電源を使いたい部屋に持っていき(重さは5kg程度で、女性でも片手で持てる)、照明・スマホ充電・ノートパソコン電源・扇風機などに使う。
使用度合にもよるが、これで4日〜1週間は持つ。2つのポータブル電源があれば、1台を使っている間にもう1台を充電できるので、切れ目なく使える。もちろん、太陽光パネルからコードを家内に引き込んで常時繋いでおいてもよい。
70Wのパネルを庭に置き、ポータブル電源に充電
使ってみて初めてわかることがある。家電製品も照明も、壁のコンセントや天井の配線から電気をつないでいたのに、ポータブル電源はどこにもつながっていない。壁のコンセント近くに家電製品を置く必要がない。家電製品の近くにポータブル電源を運べばいいわけである。
これは一種の意識革命だ。さらには、壁のコンセントや配線から独立しているということは、電線や電力会社ともつながっていないことになる。
デスクの照明・扇風機・ノートパソコン・スマホの4機器をつないでも大丈夫。ポータブル電源自体にも照明機能が付いているので暗闇や停電時も安心
今ここで使っている電気は、中東から運ばれてくる石油や、温暖化にいちばん寄与してしまう石炭や、危険極まりない原子力で作った電気ではない。国や地域や身分や収入や権利に関係なく、地球上どこでも誰のもとにも降り注ぐ太陽の光から作られていることに、驚きと喜びがジワーッとこみ上げてくる。
大企業にも権力者にも、どこにもつながれていない。自立しているのだ。それすなわち、フリーダム! 誰にも依存せず、しいては誰にも従ったり屈したりする必要がないのだ。まさにこれは革命だ!