当時、河野洋平に、日本外交史の専門家、服部龍二がインタビューした際、吉田清二のことを服部龍二が尋ねたが、そのとき河野洋平は、吉田清二のことを全く知らなかった。本の中で吉田清二の事を問われ、河野洋平は「全然知りません」と答えているのだ(『外交ドキュメント歴史認識』岩波書店 p120)。
じつは、河野洋平は、吉田清二どころか、吉田という名前すら知らなかった。
河野談話は、実は、国内で元軍人や、業者、被害者の聞き取りを行い、発表された文書だが、この時に、吉田証言は、全く採用されなかった。吉田証言を否定している秦邦彦の主張を聞き、それを採用しなかったのである。(『アジア女性基金と慰安婦問題』明石書店 p92)
このような事実を照らし合わせれば、百田氏の「朝日の誤報さえなければ、慰安婦問題はなかった」という記述が、如何に、事実に反しているかが分かるだろう。
まぁ、このように朝日をやり玉にあげ、日本の加害を隠蔽するのが、百田尚樹の得意の手法なのだが、百田氏は引き続き徴用工問題を語り始め、それが「韓国人の手による捏造」だったと言い始める。
徴用工問題とは、日本人が、第二次世界大戦中日本の統治下にあった朝鮮人を、強制的に奴隷労働させたという問題だ。
百田氏はこの問題に対し戦前、日本人は、朝鮮人を絶対に奴隷になどさせておらず、日本人が、奴隷として彼らを無理に引っ張って来て苦役を強いたことはなく、日本人と賃金も同じだったと主張。
「強制労働は、『奴隷労働』をイメージさせますが、日本人は朝鮮人を奴隷労働させていません。日本人と同じ給料、同じ労働、同じ宿舎でした」(『偽善者たちへ』p165)
「『徴用工』と呼ばれている人たちは、実は徴用工でもなく、単に応募工だったのです」(『偽善者たちへ』p167)
百田尚樹は、徴用工は日本人を貶めるためのねつ造だと言い放ち、「日本人が、絶対に、朝鮮人を、強制連行したり、奴隷的な労働を強いたことは全くない」と断言する。