2016年の桜を見る会で安倍総理の横に立つ百田尚樹氏(時事通信社)
初めまして。ライターのドリーと申します。
昨今、私には大変気が滅入っていることがあります。
それは「日本凄い」的な語を冠した本が、書店に平積みされていることであります。
そこで、自身のブログで保守論壇の本を色々と取り上げてきましたが、このたびハーバー・ビジネス・オンライン様に縁あって、保守論壇の主張、その歴史観の珍妙奇天烈ぶりを取り上げて頂けることになりました。
この企画は保守の思想、主張、その歴史観を、日本エセ保守列伝と称して、その食あたりを起こしそうなゲテモノぶりを味わい尽くすというものであります。
「肉を切らせて骨を断つ」をモットーに、ブロガーとして今まで保守論壇の珍味を、好き放題に食い散らかしてきましたが、私は元来、非常に食い意地が張っている性格です。なので、今日は、保守の中でも特に毒気の強そうな「百田尚樹」氏の著書、『
偽善者たちへ』(新潮新書)を取り上げたいと思います。
それでは、これより論評をしていきたいと思います。
百田尚樹氏は放送作家として、数多くの人気番組を手掛け、小説『
永遠の0』で作家として地位を確立、その後は、保守系文化人として虎の門NEWSなど、多くの右派系番組に出演し、保守タレントとして一躍有名になった大物だ。
物怖じしない発言と、天衣無縫な左翼叩き芸で、一般市民及びネット右翼にも絶大な人気を誇るカリスマ作家である。
で、今回この場をお借りし、その百田尚樹氏の「
深刻な歴史観」を、解き明かしていきたいと思う。彼が去年執筆した『偽善者たちへ』は保守のお馴染みの通説が、一般市民に向けわかりやすく解説されており、その歴史観の問題点が極めて端的に表れた本といえる。
百田氏はこの本の中で極めて「
ご都合主義な解釈」で、美化された日本の歴史を、誇らしげに喧伝する。
例えば百田氏は冒頭、「
慰安婦問題は、吉田清二が、火を付けたのだ」論を、本の中で展開。これは保守が唱える一般的な慰安婦問題への見解だ。
ーーそもそも慰安婦問題は、朝日新聞が報じた「吉田清二証言」が発端でした。朝日の誤報さえなければ、戦後70年以上経った現代に、慰安婦像で揉める事もなかったのですーー(『偽善者たちへ』p20)
百田尚樹氏は、現行の慰安婦問題は、「吉田清二の証言がなければ、存在しなかった」と主張。
だが、これは、事実が、若干間違っている。何故なら、
日本政府が公式に謝罪した河野談話では、吉田清二の証言は、採用されていないからだ。