ツキノワグマが人の死骸を食べた!?「十和利山熊襲撃事件」とは?
ここで、改めて前出の「十和利山熊襲撃事件」について説明しておこう。
「十和利山熊襲撃事件」とは、クマを追いかけて49年の米田氏が「私の人生の中で最も怖い事件でした」という、’16年の5月から6月にかけて秋田県鹿角市の十和利山で起きたクマの襲撃事件を指す。タケノコ採りに来ていた人をクマが次々と襲撃し、4人が死亡、4人が重軽傷を負った戦後最悪の獣害事件である。5月21、22、30日に60~70代の男性が相次いで遺体で発見。6月10日に70代の女性が遺体で見つかったが、いずれも遺体はクマに食べられた痕があったという。
女性の遺体発見現場の近くにいたメスのクマを猟友会員が射殺。遺体を解剖したところ、胃の中から人体の一部が見つかっている。しかしクマ社会ではメスよりもオスが優位にあることから、このメスのクマが主犯ではないはずと周囲を捜索したところ、大型のクマを発見。主犯と推定し、鹿角市の頭文字をとって「
スーパーK」と名づけて行方を追った。他にも複数のクマが食害したとの見方をする米田氏は「人を襲いやすい危険なクマの系統があるんじゃないかと」考え、毎年鹿角市に1か月程度行って生態を調査し続けているという。
米田氏が撮影した「スーパーK」の写真。人間を食害したクマはこのクマを含めて5頭いて、うち3頭は駆除が確認されていない
①1人は危険。2人以上で喋りながら歩くこと
②クマスプレーは必ず所持していつでも使えるように
③鈴やラジオもできれば携帯して鳴らしておく
④こちらに気づいて逃げてもらうという対策が大事
⑤台風などの悪天候予報日の2~3日前は危険
⑥万が一、遭ってしまったらまっすぐ後ろに下がる
⑦できるだけ左右に動かずまっすぐ下がって逃げる
⑧近くに木があれば後ろに身を潜めて動かない
⑨襲われそうになったらうずくまって首を隠す
⑩テントの外やBBQ後に生ゴミを放置しない
⑪ブナやミズナラが凶作の地域にはなるべく行かない
【小池伸介氏】
東京農工大学大学院准教授。野生のツキノワグマを中心に森林の動物の生態を解析。研究目的で捕らえたクマは100頭以上。NGO『
日本クマネットワーク』副代表。
【米田一彦氏】
ツキノワグマ研究家。NPO法人『
日本ツキノワグマ研究所』理事長。クマに遭遇すること3000回以上。襲われたこと8回。2000件近くの人身被害例を研究。
<取材・文/上野充昭 写真/朝日フォトアーカイブ 米田一彦氏提供 kumagai>
※週刊SPA!9月15日発売号より