「大井川の水を守りたい」。静岡県民が、リニア工事差し止め請求

9月、静岡県でリニア工事差し止めを求める裁判が始まる

山梨県笛吹市のリニア山梨実験線を走る実験車両

山梨県笛吹市のリニア山梨実験線を走る実験車両

 JR東海が2027年開通を目指す「リニア中央新幹線」。完成すれば、東京(品川駅)・名古屋間の286 ㎞を最高時速500㎞、わずか40分で結ぶ。  このリニア計画は2014年に国土交通省が事業認可をした。現在、その計画に対して2つの裁判が起こされている。今年9月には、3つ目の裁判として静岡県の住民が大井川の水を守ろうと「工事差し止め」請求を起こす予定だ。  時速500㎞という超高速移動を可能にするには、ほぼ直線的にコースを採るしかない。それを可能にするのは地下走行だ。名古屋までの286Kmのうち、地下トンネルはその86%の246Kmもある。  そこで懸念されるのは、リニアが地下水脈を断ち切ることでの「河川や沢の水枯れ」。そして、トンネル掘削で発生する東京ドーム約50杯分もの膨大な「残土の発生」。狭い集落を10年以上も残土を満載した工事車両が数珠つなぎに走る「生活阻害」。さらには、ルートの14%の地上部走行部分においても「騒音」「日照障害」、約5000件もの「立退き」などの問題があげられる。  リニアが通る1都6県(東京都、神奈川県、山梨県、静岡県、長野県、岐阜県、愛知県)では、市民団体や地元住民組織などが反対運動を展開しているが、これまで裁判に立ち上がったのは2例ある。
リニア工事差し止め請求を起こした山梨県南アルプス市の住民

2019年にJR東海を相手取り、「リニア工事差し止め請求」を起こした山梨県南アルプス市の住民たち

 2016年、738人の原告が国交省を相手取り「事業認可取消し」を求めた行政訴訟。そして、2019年、山梨県南アルプス市の住民8人がJR東海を相手取っての「工事差し止め」を求めた民事訴訟だ。これに今年、静岡県民が参戦する。なぜ静岡県民は裁判を起こそうとしたのだろうか。

工事で失われた水は全量、大井川水系に戻してほしい

8市2町の地図

リニア工事で大井川が減流すれば、影響を受けるであろう8市2町の地図。出所は「リニア中央新幹線建設に係る. 大井川水問題の現状・静岡県の対応」(静岡県)

 リニアが通る1都6県の中で唯一、工事が始まっていないのが静岡県だ。その経緯を簡単に説明すると以下のような流れになる。  2013年10月。JR東海は環境アセスの結果として、静岡県最北部の南アルプスでのトンネル工事をすると「(無策なら)大井川の流量が毎秒2トン減る」と予測した。  これは大井川の水を水源とする8市2町62万人分の水利権量と一致する膨大な量であり、県下の自治体はいっせいに驚いた。川勝平太知事はJR東海に対して、「この件での協議に参加すること」という要請を出す。  これにJR東海が応じたことで2014年から、県・学識者・利水団体・JR東海が話し合う「静岡県中央新幹線環境保全連絡会議」(以下、連絡会議)が開催された。  静岡県でも、膨大な残土の発生や生態系への影響、水枯れなど、多岐にわたる問題が予想される。連絡会議で県が強く訴えたのは「失われた水は全量、大井川水系に戻してほしい」ということだった。
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JR東海の「努力目標」に静岡県側は不信感
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