前日の”うがい薬奨励”の記者会見で批判が続出したのを受けて、翌日(8月5日)の府知事会見に臨んだ吉村洋文・大阪府知事
5月の段階で「コロナ対応で最も評価している政治家」(
5月6日の『毎日新聞』による世論調査)で第1位になった吉村洋文・大阪府知事だが、実際は第2位の小池百合子知事とともにコロナ第二波の“元凶”なのではないか――。こんな疑問が確信に変わったのは8月5日のことだった。
前日の“うがい薬奨励会見”での批判噴出を受けて吉村知事が臨んだ府知事会見。大量PCR検査のニューヨークを手本にした「世田谷モデル」について私が質問、否定的な回答が返ってきた時のことだった。
――世田谷区の保坂(展人)区長がニューヨークをお手本に、東大の児玉(龍彦名誉)教授の助言を受けながらPCR検査の大量検査、「いつでも無料でどこでも受けられる」という「世田谷モデル」を発表しました。これをどう受け止めるでしょうか。大阪でも似たような取り組みをするのでしょうか。
吉村知事:世田谷の保坂区長については、それぞれ特別区ですから、自前の保健所も持っていると思いますし、区長独自の判断としてされていることだから注視していきたいと思います。
今、大阪府で検査がいちばん多いのは大阪市ですが、その世田谷区の方式をそのままわれわれに当てはめることは、現状ではそう簡単にはできないだろうと思っているし、やる必要もないだろうと思っています。
大阪では現在導入する予定はありません。必要なPCR検査をオール大阪でしっかりやっていくことに変わりはありません。
小池知事も吉村知事も「世田谷モデル」を参考にする姿勢は皆無
小池百合子都知事。8月6日の知事会見では、ニューヨークをお手本にした「世田谷モデル」(保坂展人区長が推進)について聞いても、無言のまま立ち去った
「世田谷モデル」を評価していた地元記者は、吉村府政をこう批判する。
「大阪のPCR検査数は足りていない。医療関係者や介護関係者にうがい薬の奨励をする暇があったら、世田谷モデルを参考にしながら、医療関係者や介護従事者らエッセンシャルワーカーがニューヨークのように無料でPCR検査がどんどん受けられるようにするべきだ。無料大量検査に否定的なのは、大阪都構想や大阪万博やカジノ誘致のために大阪府の“貯金”に当たる財政調整基金を温存しようとしていると見られても仕方がない」
ましてや大阪のPCR検査は唾液採取の1検体しかないのに、「うがい薬」を使ってしまっては正確な数値が取れなくなってしまう。そんなデタラメを発表しているにもかかわらず、である。
無料PCR検査の世田谷モデルに消極的なのは小池知事も同じだ。筆者は、7月31日の都知事会見で、次のような声かけ質問をした。
「知事、ニューヨークに比べて対策が遅れているのではないですか? (ニューヨークではPCR検査を)無料でどこでも受けられますよ。都民も(無料で)受けられるようにしないのですか?」
8月6日の東京都知事会見でも指名されなかった筆者は、再び同様の声かけ質問をした。
――知事の怠慢が第二波の原因ではないですか? 知事選中の甘い対応が全国に感染拡大をさせたのではないですか? ニューヨークは無料で検査を受けられますよ。世田谷に比べて、遅れているのではないですか?
この時も小池知事は無言のまま立ち去った。
小池知事も吉村知事も、ニューヨークを手本にした「世田谷モデル」を参考にする姿勢は皆無だった。感染拡大の責任を都民・府民に押しつけている形の“人気知事コンビ”は、「自分(選挙)ファースト・住民二の次」であるのも共通点。
小池知事は都知事選中に東京アラートが再点灯しないようにするなどの甘い対応で第二波を招いたが(筆者の新著
『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』参照)、同じように維新副代表を兼任する吉村知事も大阪都構想の住民投票の11月1日実施を最優先にしているという。世田谷モデルに評価する地元記者はこう続けた。
「数値目標を撤廃して東京アラートが再点滅しないようにした小池知事ほど露骨ではありませんでしたが、吉村知事も独自基準の『大阪モデル』の数値目標を緩くして『赤色(警戒レベル)』がライトアップされにくいようにして、過去最多の感染者数を記録更新した現在でも『黄色(注意喚起レベル)』のままにしたのです。
『感染拡大防止』から『経済優先』へと舵を切ったのですが、同時に“吉村人気”の高いうちに大阪都構想の住民投票を済ませてしまうという狙いもあります。コロナ禍のうちは延期するべきだという要望書もいくつも出ていますが、そうした民意を無視しているのです」