リニアについては「今のプランのまま進めてもらいたい」
リニア推進論を口にした7月29日の吉村知事会見
リニア中央新幹線についても、吉村知事の利益誘導的姿勢は同じだった。7月29日の府知事会見に続いて8月5日にはJR東海の赤字転落をぶつける再質問をしたが、リニア推進論を再び口にするだけだったのだ。
――JR東海は「(4月―6月の四半期決算で)赤字に転落した」という発表をしていますが、だとすれば(JR東海が)V字回復しなければ、黒字でリニアをつくるスキームは破綻すると見ているのでしょうか。黒字が出ない場合は国民負担でつくることになると思いますが、そうしてまでもつくる必要があると考えているのでしょうか。
吉村知事:リニアについては赤字という話でしたが、やはり大動脈になっているこのJR(東海)の東京・大阪間を結ぶようなところですら経営が非常に厳しい、こんなんはなかなか普通ないわけですが、まさにそれがコロナの怖さです。
この大動脈のこのJR東海でも乗客率も数%(※東海道新幹線の乗車率は前年同期比で84%減)という状況になっているのを見たときに、本当にこのコロナが社会に与える影響は強烈だなと改めて実感をしています。
コロナに打ち勝つものを我々は見出していかないと、本当に生活が成り立たなくなるのではないか。大阪を、府民を守る知事の立場からして、やっぱりコロナになんとか打ち勝つ策を取ってはいきたいというふうに思っています。
赤字においてリニアをするかどうかは、もう赤字というのも今コロナの状況がどうなるか、この先どうなるかも分からないところもあります。リニアは50年、100年先を見越したプランだと思っていますので、当然経営条件も踏まえたうえで、今のプランのまま進めてもらいたいと現在は考えています。
――(リニアは)国民が負担してもつくるべきだという考えなのですか。
吉村知事:いや、「国民が負担しても」という別のスキームの話にはなってないのだから、今のスキームで進めていってもらいたいと思います。
この発言もまた「大阪へのリニア延伸さえ実現すれば、他はどうなってもかまわない」という自己中心的なものでしかない。吉村知事をメディアは「コロナ時代のニューリーダー」であるかのように紹介するが、実態は、コロナ前の時代の発想(スキーム)で思考停止した「守旧派」なのではないか。
コロナ後の時代においては、新幹線乗客率が下落する可能性は極めて高く、今のスキームではリニア建設は困難で、国民負担を伴う「別のスキーム」が必要となるのは確実だ。だからこそ、コロナ禍が収束するまでリニア関連工事はいったん凍結し、JR東海の経営回復ぶりを見極めたうえで国民負担額(税金投入額)を算出、建設継続か中止かを決める国民的議論が不可欠なのだ。
「やっている感」の演出が得意の小池知事と共通点が少なくない吉村知事に対しては、「うがい薬」会見で浮上した疑惑を含めて、言動の信憑性などについて厳しく検証する必要がある。
<文・写真/横田一>