コロナ禍の中で、住民投票を実行する考えには変わりなし
大阪モデルについて、吉村知事も小池知事と同じように、自分に都合がいい制度変更をしていたのだ。7月29日の吉村知事会見で質問した際に、筆者もこのことを実感していた。
――都構想ですが、過去最高の感染者数を記録しても予定通り、(住民投票を)11月1日に実行される考えは変わらないのでしょうか?
吉村知事:8月末、9月議会で我々が上程したら判断することになります。基本的に現状であっても都構想の住民投票、民主主義の根幹といえるものについては、僕は実行すべきだと思っていますから、予定どおり進めていきます。ただ9月の段階において(大阪モデルで)赤信号がともっているような状況であれば、その時期については考えます。
――コロナ禍において、都構想を急いでやる必要があるのかという疑問も出ていますが。
吉村知事:民主主義の根幹といえる制度機構改革。これは当然マニフェストでも僕自身も公約としてやってきたことでもあるし、大阪にとって必要だとも思います。今回、コロナ禍において大阪府市がバラバラにやっていたら、ほとんど対策はうまく取れなかったと思いますが、バーチャル都構想で府市一体でやれば、やはりかなりスピーディーに物事も進めることができます。コロナ禍であるこの現状において、都構想は改めて必要と再認識をして、進めていきたいと思っています。
大阪ダブル選挙で吉村・大阪府知事と松井一郎・大阪市長が当選したのは2019年4月7日。次の選挙がある2023年4月まで、「吉村知事(維新副代表)・松井市長(維新代表)」体制は続く。「府市一体のコロナ対応」が住民投票延期の理由にならないことは選挙日程からすれば一目瞭然だ。そこで8月5日の府知事会見・政務で再質問をしたが、吉村知事の回答は同じだった。
――今の松井市長と吉村知事の体制が2年は続くわけですから(都構想住民投票の)1年ぐらいの延期は十分可能ではないでしょうか。「(府市一体の)コロナ対策は理由にならないのではないか」と思いますが、他に延期してまずい理由があるのでしょうか。
吉村知事:選挙にしろ住民投票にしろ、民主主義にとってこの重要なものについては、それができない状況でない限り僕はやるべきだと思っていますし、現在の状況においてこの住民投票を変更するということは考えていません。
「Go Toキャンペーン」の大阪府免除は、経済的メリット優先?
7月15日に永田町で地方分権に関する超党派勉強家で講演をした吉村洋文・大阪府知事。永田町との太いパイプを感じさせる
吉村府政の、安倍政権と癒着する姿勢も第二波感染拡大を招く弊害をもたらしてもいる。「Go Toキャンペーン」で東京着発が除外されたのに、大阪着発が除外されない特別扱いの結果、感染した大阪府民が全国の観光地に出かけたり、逆に大阪を訪れた旅行者が感染したりするリスクが増大している。大阪エリアが感染の“震源地”となる事態を招いているのだ。
そこで7月29日の府知事会見で吉村知事に聞いてみた。
――「Go Toキャンペーン」で(除外になった)東京と同じぐらいの感染状況にある大阪が除外にならないのは、「安倍政権と維新の太いパイプのせいで大阪は除外にならない」との誤解を招きかねないと思いますが、大阪は除外すべきだと考えているのでしょうか。
吉村知事:(Go Toキャンペーン除外の)基準を作った上で判断すべきだと思っています。除外する、あるいは元に戻す基準がないので問題だと思います。(安倍政権と維新が)仲がいいとか悪いとか、そういうところで決まっているものではありません。
――菅官房長官らに基準作りの申し入れなどはしたのでしょうか。(今後、申入れを)する予定はないのでしょうか。
吉村知事:あらゆる媒体で、僕自身はこの基準が必要だということを明確に発信しています。
これは“アリバイ的発信”をする維新と、安倍政権の癒着関係のように見える。吉村知事は基準作りの必要性を発信はするが、官邸への申し入れまでは踏込まない一方で、未だに基準作りをしない安倍政権の「大阪発着除外免除」の恩恵を受けている。その後の感染リスクを無視して見せかけだけの「経済的メリット」がもたらされればいいという自己中心的思考だと批判されても仕方がない。