すかいらーく系レストランでミスト噴霧される謎の除菌液。運営会社によって主張が食い違う「成分」

レジ横で噴霧される謎のミスト

レジ横で噴霧される謎のミスト(7月27日、都内、撮影:藤倉善郎)

 前回に引き続き、すかいらーくグループが、新型コロナウイルス感染予防対策として、ガスト・バーミヤンなどで行っている〝除菌液〟噴霧についての話を続けていく。  医師や科学者だけでなく、厚労省や経産省、消費者庁が連名で「空間噴霧」について非推奨とするなど、「空間除菌」については常に否定的な声がつきまとう。そこで、前回記事では筆者はすかいらーくグループで噴霧されている謎の除菌液について、同社広報部へと質問状を送ってみたが、その回答は「弊社では、メーカーによる第三者機関での検査の結果、安全性が確認されているため、店舗内の快適な環境維持のために使用しております」というものであった。

すかいらーく側の説明と矛盾する販売サイトの説明

 前回、筆者が店舗の責任者に聞いた、噴霧されている液体の製品名は「アピノンエアー」というものだった。また、6月末にすかいらーくグループお客様相談室へ問い合わせた人物は、同社からの回答では、その成分は問い合わせした人物が指摘した安定化二酸化塩素ではなく、チ・アルキル・アミノ・アリール・スルフォネート還元化水とアピザスを主成分とする〝アピノンAir〟という製品で、人体に有害な次亜塩素酸関連は使用していないと強調していたという。  そこで筆者はノンチとアピザスを主成分としたアピノンスプレーを入手。そのボトルを確認してみた。すると、〈品名〉には「消臭除菌剤」、〈成分〉として「両性界面活性剤」「抗菌剤(AP-W)」「精製水」と表示されている。  しかし、経済産業省所管の独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が物の表面消毒に有効と認めた計9種類の界面活性剤を含め、空間へ界面活性剤を噴霧することによるウイルス除去効果は確認されていない。 〈参照:News Release|nite〉  また、アピノンシリーズの専門オンラインショップ『Apinonn』には、前回記事で明らかとなっていたすかいらーくサイドの説明とは相反するような記述があった。  同ショップサイトでは、前述のように二酸化塩素が主成分のアピノンエアーは「自己責任において加湿器に少量を入れて空間除菌にも使用できます」とあるが、ノンチとアピザスが主成分のアピノンスプレーについては「加湿器に薄めて入れたり、ミストとして空間に噴射して吸っていただくことは出来ません」となっている。〈参照:アピノンスプレー アピノンシリーズ|Apinonn
販売サイトの表記

販売サイトの表記

 また、同ショッピングサイトのFAQには以下の内容も掲載されている。 >Q:アピノンスプレーの中身を加湿器に入れて空間除菌に使用しても良いですか。 >アピノンスプレーとアピノンエアーの中身は違います。 アピノンスプレーの中身を空間除菌に使用することはおやめください
api2

アピノンエアーは空間除菌不可と明記

  すかいらーくレストランで噴霧されているものと同じはずのノンチとアピザスが主成分のアピノンスプレーは、販売代理店のサイトにおいて〝空間噴射〟が禁じられていたのだ。  そこで、改めてすかいらーく店舗で噴霧しているアピノンAirの主成分の提示、そして空間除菌機器設置についての文言を公式サイトから削除した理由と削除後も噴霧を続けている理由などへの回答を求め、すかいらーくホールディングス広報チームへ質問書を再送信した。  各チェーンレストラン利用客及び従業員の健康と安全にかかわる事案のため、詳細な回答を求めたが、期限までに返信はなかった。

グループ内の別の運営会社サイトも噴霧機器に関する記述を削除

 すかいらーくグループの主だったレストランブランドは株式会社すかいらーくレストランツによって運営されているが、いくつかのブランドは株式会社NILAX(ニラックス)と株式会社トマトアンドアソシエイツが運営している。この両社の公式サイトにおいても、それぞれ7月上旬まで掲載されていた「超音波式消毒ミスト噴霧器の設置」と「店内空間の除菌・抗菌を行う機器を設置し、今後従業員控室にも設置」との文言が削除されていた。
NILAX及びトマトアンドアソシエイツ公式サイトで削除された文言

消毒ミスト噴霧器・空間除菌機器の記述が消えた両運営会社のサイト(NILAX及びトマトアンドアソシエイツ公式サイトより)

 そこで、筆者は削除した理由について、各運営会社のお客様相談室に問い合わせてみた。  NILAXは「判らない」、すかいらーくレストランツは「ホントですね、なくなってますね」と驚き「こちらでは聞いてはいない」とやはり削除の経緯や理由は判らないという。  唯一、削除の〝理由〟を説明したのがトマトアンドアソシエイツ社の担当者だった。 「当初、いつからいつまで提示するというのが決まっていまして、HPなものですから期間設定みたいなものがございまして、それが終了したということで特に大きな理由はないというのが答えになる」  特定の文章のみが削除されており他はそのまま残っていること、現在も〝空間除菌機器〟が設置されているのにもかかわらずその文章だけが削除された点を指摘したが、〝答え〟はすかいらーくHDの本体に問い合わせしてほしいとのことだった。
次のページ 
運営会社ごとに主張が食い違う薬剤の成分
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会