下がり続ける日本人の読解力。「読みやすい本」に潜む脳への悪影響とは

「読みやすいから売れる」の皮肉

 そのような本をたくさん読んでも、読解力や考える力、理解する力は大きく身につけることができない。  もちろん売れている本、流行の本を読むのもよいことだ。しかし、読解力を身につけるためには、できればアナログ、難しければデジタルでもいいので、日本の古典文学や哲学書のような、複雑な論理構造や行間理解が必要な読書を行う必要がある。もちろん、斜め読みをせずにだ。  皆さんは、哲学書や古典文学を最近読んだだろうか?  古典文学は美しい論理構造を持っており、前提知識がないとわからないものは少ない。難しくて読んで理解するのに時間がかかるが、論理構造がめちゃくちゃでわからないという類の本ではないので、脳の読解力の向上に繋がるのだ。  現在売れている本は、今の日本人の読解力レベルに合わせてあるので、「読みやすいから売れている」という可能性もある。つまり、たくさん読んでも実にならないかもしれないのだ。また、書かれている内容が重複していることも珍しくない。

あえて読みにくい本を読む

 話を簡単にまとめると、読みやすい本は読んでいて楽だが、読みにくい本を読むことも必要だということだ。  例えば、読解力を上げたいならば、ニーチェキルケゴールらの書いた哲学書や、太宰治夏目漱石の著書がオススメだ。比喩の内容を考えたり、論理構造やストーリーが美しく作られているので、読解力を身につけるのに効果的だろう。  読者の皆さんも、このような読解力が必要な本を最近読んだのはいつだろうかと、思い返してみてほしい(もちろん、エッセンシャル版や超訳版ではなく)。  本をたくさん読むことはよいことだし、最新の情報を得るためにニュースやブログ記事を読むのもよいことだ。だが、「何を読むか?」「どう読むか?」を意識して読まなければ、自分のスキルアップには繋がらない【参考資料】 『OECD生徒の学習到達度調査(PISA)』国立教育政策研究所 『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳:「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる』メアリアン・ウルフ <文/山本マサヤ>
心理戦略コンサルタント。著書に『トップ2%の天才が使っている「人を操る」最強の心理術』がある。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催中。
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