2つの古都を繋ぐ和菓子屋の魅力。ポーランドの古都・トルンで和菓子屋を営む日本人エンジニアの挑戦

最大の障害は言葉の壁

和菓子  店名の「KOTONOHA=古都の葉、言の葉」には、2つの願いが込められている。和菓子を通じて大切な人と言葉を交わしてほしいという願いと、古都京都の和菓子の葉を古都トルンから広げていきたいという願いだ。 「現在は週末だけの営業ですが、徐々に、密に、地元に根ざしたお店づくりを目指しています」  とはいえ、異国の地で飲食店をオープンするにあたっては、やはりさまざまな障害があったという。 「会社自体はエージェントを通して設立しました。ただ、ビザの更新などは、やはり書類が多くて大変でしたね。衛生管理・防火管理の資格など、役所的な手続きはポーランド人の友人に手伝ってもらったのですが、こちらもコミュニケーションが難しかったです。物件探しも、直接大家さんに会って日本人だとわかると連絡がこなくなったり……。日本に比べれば安いですが、創業には数百万円ほどかかりました」  開店までにも困難がつきまとったが、とはいえ勝負はこれから。前述のとおり、ポーランドの街、そして生活に溶け込むことが目標だ。 「人が集まったり、出会ったり。日本に興味がある人たちのハブになれたら嬉しいです。また、今後はこれまで培ってきたスタートアップマインド、ITを駆使して、和菓子をポーランドに広げていきたいですね」

ポーランド人からは「どら焼きが美味しい」の声

評判のどら焼き  オープン時には、早くもポーランド人から好意的な声が挙がった。 「どら焼きがスゴく美味しかったです! ポーランド人はコーヒーや紅茶とお菓子を楽しむのが好きなので、問題なく受け入れられると思います」(ポーランド人・女性・29歳)  古都に新たな歴史を刻むには、順調な滑り出しだ。まだまだ戸惑うことも多いが、ポーランド移住から2年が経ち、同国での生活には満足しているという。 「『英語が話せる人が多い』ということでしたが、中高年には通じないことも多いです。何より、一番話せるべき行政でうまくいかないことが多い(笑)。しかし、これまでオーストラリア、アイルランド、アメリカ、中国に住んでいたことがあるのですが、人々が優しくて面倒見がいいですね。初めは少し距離があるのですが、ポーランド語が少しでもできると途端にフレンドリーになります。創業にあたっても、ポーランド人の友人、みんなが何かしら手伝ってくれました」  現地住民の想いに報いるべく、ポーランドに和菓子を通じた「甘い生活」を浸透させられるか。「KOTONOHA」がトルンの街に根づき、葉を実らせる未来は、そう遠くないはずだ。 <取材・文/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会