リモートの浸透で無駄な会議が時短したけど……。まだまだ残るダメ会議にありがちな落とし穴

洗い上げと掘り下げがキモに

このような相談を受けたとき、私は「残りの17の異論や懸念については気にしないで、実行してみてください」と返答している。実施していただくとわかるが、最も深刻な順に上位3つの異論や懸念が解消されているので、「これでひとまず実施してみましょう」という合意形成がかなりの程度できている状態だ。  例えば1か月実施してみて、4番目から20番目の前回の会議ではマイナーな異論や懸念だった問題があらためて浮上し、深刻度合が高まったら、その1か月後の会議で合意形成していけばよいのだ。  しかし、この方法、洗い上げや掘り下げを行っておらず、最も深刻な異論や懸念から議論したのではなく、出たとこ勝負で、出された異論や懸念から次々と議論していたのであれば、使えない。  つまり、異論や懸念の洗い上げと掘り下げこそが、限られた時間で可能な範囲で合意形成し実行してみる→実行した結果をふまえて、あらためて会議を行い、その時点で浮上した問題を解消するというプロセスを可能にするのだ。  生活様式や働き方が変わるなか、限られた時間で合意形成し、まずは実行してみる。その結果をふまえて、あらためて限られた時間で合意形成するというという、合意形成と実践の反復経営が浸透するに違いにない。そのために、4つの質問による合意形成が有効だ。

まずは実行に移せる程度の合意を

 質問:他の異論や懸念を無視してよいのか  1番目から3番目までの深刻な問題について、示唆質問とまとめの質問を繰り出して合意形成すればよいということですが、それでは、例えば異論や懸念が20出されたとして、残りの17の異論や懸念については無視するということでしょうか? 異論や懸念がまだ残っているのに、それらを放置しておいてよいわけがありません。 深刻度と異論のグラフ  回答:ほかの異論や懸念は無視してよい  主要な異論や懸念について合意できていて、参加者が「もう、その他の異論や懸念について議論しなくてもよい」というように思ったのであれば、残りの異論や懸念については議論しなくてもよいのです。  例えば「システムのエラーを解消する」「製品の瑕疵をなくす」という問題は、何回でも、いくら時間がかかろうとも、何人必要になろうとも、問題がゼロになるまで解決していかなければなりません。  そうした問題と、人間の合意形成の問題は、別物なのです。人間の合意形成は、「主要な問題が解消されれば、試しにこれでやってみてもよいな」「深刻な問題が解決されていれば、少なくとも反対しない」という状況でも可能なのです。  この違いに着目せずに、人間の合意形成の領域に、品質管理のための全てのエラーを解消するマトリックスを導入してしまうから、合意形成に時間がかかり過ぎてしまうのです。 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第196回】 <取材・文/山口博>
(やまぐち・ひろし) モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある
1
2
ひとつの質問で合意形成できる! ビジネススキル急上昇 日めくりドリル

ひとつの質問で、合意形成できる! 1日1問で確実にデキるようになる! 年間100社・5000人、20年以上実践してきた能力開発プログラム

バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会