4つの質問とは、「
洗い上げ質問」「
掘り下げ質問」「
示唆質問」「
まとめの質問」だ。洗い上げ質問とは、「この方針について、気になる点を遠慮なく出してください」「反対意見も歓迎ですので、ご意見ください」というように、
異論や懸念を洗い上げる質問だ。
大事なポイントは、
洗い上げ質問をしている間は異論や懸念を洗い上げることだけに専念し、出された意見についての応酬は一切しないしさせないということだ。
議論が先に進まないのは、応酬してしまうからだからだ。
洗い上げ質問で異論や懸念が出尽くしたと思ったら、次に進行役が繰り出すのが
掘り下げ質問だ。「今出た異論や懸念のなかで、最も深刻なのはどれですか」「どれから先に議論したいですか」というように、
出された異論や懸念を深刻な順に並び変えるのだ。
例えば、最も深刻な問題が、「人手が足りないから、その方針を実行できない」というように明確になったら、進行役は
示唆質問を繰り出す。「人員を補充できたとしたら、賛成ですか」「○○チームの協力を得られたとしたら、試しに実施してもよいと思いますか」というように、
ある前提をおいて方向性を示唆し、その方向性について合意形成する質問だ。
示唆質問は、最も深刻な異論や懸念を発言した人に対して繰り出す。示唆質問で合意形成できたら、今度は参加者全員に対して、「○○の前提で、方針を実施するということで、よろしいでしょうか」というように、
まとめの質問で確認するのだ。
進行役が
4つの質問で進行していくと、議論が先に進まないという状況が格段に解消される。それでもなお、議論が後戻りするケースがある。
洗い上げ質問が終わって掘り下げ質問に入ったにもかかわらず、「先ほど洗い上げ質問のところで思いつかなかったが、あの問題がある」「言い忘れたが、この問題もある」というように、
新たな異論や懸念が出されてしまうのだ。
このケースは、
洗い上げ質問に十分な時間が確保できていなかったという理由が極めて多い。進行役が短時間で会議を終わらせようと思うがあまり、
洗い上げ質問に対する意見が十分に出されないうちに進んでしまうと、こうなってしまう。
議論や後戻りさせないポイントは、洗い上げ質問にあるのだ。
質問:掘り下げようとすると新たな異論や懸念が出てしまう
洗い上げられた異論や懸念のなかから、最も深刻な問題を掘り下げようとすると、その段階で洗い上げた異論や懸念とは別の
新たな異論や懸念が出て、進行が思ったとおりに進みません。何が問題なのでしょうか?
回答:洗い上げを十分に行う
洗い上げ質問で、方針説明者や進行役が考えている最も深刻な問題が発言されると、進行役はつい、そこから
すぐに掘り下げ質問に移行してしまいがちです。参加者が感じている異論や懸念が十分に洗い上げられていない状況です。
このように洗い上げ質問で、異論や懸念の洗い上げが十分に行われていないと、掘り下げ質問に移行してからまだ別の問題があるということで、
議論が逆戻りしてしまうことになってしまいます。
出された異論や懸念に対して、すぐに掘り下げ質問に移行してしまいますと、異論や懸念の洗い上げがされていないということになってしまいます。
異論や懸念の洗い上げを十分に行うということが、とても大事なポイントです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第193回】
<取材・文/山口博>