渋谷署前を通り過ぎるデモ隊
東京・渋谷で6月6日、渋谷署の警官による在日クルド人男性への暴行事件に端を発する抗議デモが行われ、約500人が参加した。アメリカでの警官による黒人男性殺害事件への抗議も加わり、外国人と思しき参加者も多いデモになった。
発端は5月22日。渋谷区の路上で警官がクルド人男性に対して、「職務質問」として怒鳴りつけ暴行。男性が全治1カ月の怪我を負った。
このヘイトクライム対するデモが
5月30日に行われたが、デモ終了後、渋谷署前で参加者と警官が揉み合いに。今度はここで参加者の男性1人が渋谷署の植え込みに入ったところ「建造物侵入罪」の名目で逮捕された。
男性はすでに釈放されたが、これを受けて行われたのがこの日のデモ。アメリカ・ミネアポリス市での警官による黒人男性殺害事件に抗議する動きへの連帯も表明し、当日は多くの外国人と思しき人々も参加した。
デモ開始前、渋谷駅のハチ公前広場で主催者が、警官に暴行されたクルド人男性が警官に対する刑事告訴や国を相手取っての民事訴訟を予定していることを報告。またTwitter上で、別のクルド人男性が誹謗中傷を受けていることから、これについても訴訟を予定しているという。
抑圧される当事者が声を上げることをできない日本社会
「今日ここに来たいと思ったけど、警察の暴力が怖いから、逮捕されたら怖いから行けないという声が私にも届いてるし、皆さんの周りにもあると思います。5月30日(の抗議デモの際)に逮捕されたのは日本人でしたから、拘束されること自体おかしいんですけども、拘束された後解放されました。しかし、もしビザの資格の弱い外国人が逮捕されたら、これだけでは済みません。非常に大きなリスクがあります。これっておかしいんじゃないですか。レイシズムによって一番抑圧されている当の本人が、声をあげることができないようになっているんです。この警察の暴力によって。私はこれはおかしいと思います。そのことをみんな心に留めて、その人達の分も大きな声を挙げていきたいと思います」(名波ナミ氏)
アメリカでの黒人男性ジョージ・フロイド氏殺害事件にも言及した。
「アメリカの状況と日本のクルド人に対する警官の暴力は、全く同じ構造を持っています。アメリカの現状は皆さんご存知だと思いますが、それを“海の向こうは大変だなあ”とただ眺めて、SNSのアイコンを黒くしたりして1週間経ったら忘れちゃうとか、そういうことじゃなくて、差別を制度化している世界、そして制度がされた差別に基づいた暴力をマイノリティに振るっているこの社会に対して、みんなで団結して、協力して声を上げていきたいと思います」(同)
デモ出発前、1人の黒人男性がマイクを握った。
「いま2020年。差別が起きてるなんてありえないんです。それは黒人だけじゃなく、差別って肌の色は関係ないんですよ。日本人の中でも差別が起きているんですよ。警察は、人を守るために作ったわけです。その警察を誰が守るかというと政治家です。警察を守らなきゃいけない。警察を守った上で警察は人を守る。それは政治家の責任です。我々は警察と戦うんじゃなくて、今の政治家を変えるべきだと思うんですよ」
「差別って肌の色は関係ないんですよ。日本人の中でも差別が起きている」と訴える黒人男性