「私に暴力を振るった。謝罪もなく許せない」と訴えるラマザンさん
「ヘッドロックのように警官に首を抑えられた」と再現するラマザンさん(左)
この点にラマザンさんは怒りを隠さない。
「現場は私の近所です。そこであんな目に遭ってとても恥ずかしい。それなのに私に暴力を振るった警官たちは謝罪もなくそのままいなくなりました。許せない」
威圧行為は15分くらい続いたが、首をヘッドロックのように抑えられたラマザンさんは、その後病院で加療1カ月の「頸椎ねん挫」と診断された。
ただし、警察の主張は異なる。
筆者はこの件で、渋谷警察署にも問い合わせをした。最初に現場にいたのは東京第一自動車警ら隊なのか、彼らが渋谷警察署に応援要請をしたのか、なぜ職務質問を受けるに至ったのか……。
回答は
「調査中」というだけで詳細は教えてもらえなかった。唯一、あの威圧行為に至った理由が
「クルド人が警官の『車の中を見せてください』との職務質問に応えようとせず、車を急発進して逃亡を図った」との説明だけは受けた。
両者の言い分は異なるが、ラマザンさんが職務質問を拒否したことは共通している。ただし、それが
「急発進の逃亡」なのかは見解が異なる。
そこで筆者は、署員に
「急発進はドライブレコーダーに記録されているのか?」と質問したが、これも回答は
「調査中です」だった。
すべての職務質問がまったく不要とは、筆者は思わない。だが警察側の説明が正しいとしても、問題となるべきは映像に残されたような威圧や暴力の行使だ。相手が暴力的に反抗しない限りは、威圧や暴力は不要だったのではないのか。
ラマザンさんは5月27日、「特別公務員暴行陵虐致傷罪」で威圧行為を行った警察官2人を刑事告訴。現場には幾人もの目撃者もいたので、どちらの言い分が正しいのか? 今後の裁判が公正に行われ、しっかりと明らかになることを望む。
<文/樫田秀樹>