忘れちゃいけない大学入試改革の議論。英語の民間試験に批判的な委員も検討会議に復帰。今後の行方は?

会議の様子 第7回「大学入試のあり方に関する検討会議」が、2020年5月14日に前回と同様にリモート方式で開催されました。なお、この様子は、YouTubeでも確認できます。  文中の(x:xx:xx)はこの動画の中でその発言があった時間を表しています。  さて、今回は、外部有識者を招いて意見を聞いた点が評価できる点です。これまでも、そして今回の会議でも指摘されているように、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)に関連して「民間試験を利用しようとしたこと」「数学・国語で記述式を導入しようとしたこと」について、何度も声をあげたり、警告したにも関わらず、文科省側がことごとく無視を続け、都合のよい意見のみで動いていたことが、今回呼ばれた複数の有識者からも確認されています。さらに、それまでの文科省をコントロールしてきた関係者の名指しも行なわれました。  今回の議題は以下の通りでした。 1.新型コロナウイルス感染症への対応状況 2.外部有識者・団体からのヒアリング(高校生2名を含む) 3.その他

来年度の大学入学選抜と9月入学に関する説明

 最初に議題1として資料1に基づき事務局より大学入試と9月入学について説明がありました。  令和3年度の大学入学者の選抜について、まず、総合型選抜(AO入試)及び学校推薦型選抜(推薦入試)の実施にあたっては、受験生が不利益を被らないよう大学に対して配慮を求める通知を出したとのことです。また、一般入試については、例年6月に入試選抜要項を出しますが、今は、引き続き検討中とのことです。  次に、9月入学については、社会全体の問題であるので関係省庁と協議中とのことでした。

各委員の発表 倉元直樹氏(東北大学高度教養教育・学生支援機構教授)

【概要】  「大学入試学」と称して入試研究と実務に携わる立場から、東北大学の現状を踏まえて意見を述べた。委員の考えは、「個別試験(国立大学であれば二次試験)」を充実させることが重要であるというものである。共通テストに関しては、様々な調査から記述式の問題点などを含め、改革はどこかで頓挫することは十分に予想できた。しかし、何度もこのことを申し上げたがなかなか聞き入れてもらえなかった(0:22:50)。今回の誤りの発端は、大学入試改革の副作用を意識してこなかったからで、特に理念からの出発したことは誤りである。今後は出口からの議論(手順を詰めて慎重な吟味をする)が必要である。  さらに、小問単位で入試状況を分析した結果、ほとんどの国立大学が二次試験で記述式を課しているという現状があり、二次試験を基本として選抜することが重要である。その上で、作題負担の軽減などの支援が必要である。  最後に、可能な限り、大学入試を受検する予定の人達がこれまで目標としてきたことを変えない方向で進むべきであると述べた。 【解説】  エビデンスに基づく説得力のある説明でした。前回の渡辺委員と同じように「何度も、このままではまずいということを専門家の立場から忠告したが聞き入れられなかった」と発言されたことは重要です。  また、センター試験の大学側の対応は、大学側には負担が重く苦痛であるという発言もあり、これは、第6回の大学入試センター理事長の山本委員の考え方とは異なるものでした。  また、発言の一部は国立大学目線でした。国立大学の場合、記述式は、英語、数学、国語の3教科だけでなく、理科の中にも多いことを指摘し、募集人員レベルで見ると、記述式を経ないで大学に入学する人は、全体の10%未満であることも指摘しました。 【質疑応答】 両角委員  現状の共通テストは今のままでよいのか、変えた方がよいのか? ⇒日本テスト学会から意見表明をしている。良質であるセンター試験が質的に劣化することが心配である。 柴田委員  大学入試学が成熟しないのは何が問題なのか? ⇒入試が機密事項であるため、学生が触れることができず養成が困難であることが問題である。 岡委員  共通テストと個別試験の役割分担はどうするべきか? ⇒個別試験ですべてを見ることはできないので、基本的な部分は共通テストの役割は大きく、大学が頼っている。共通テストは受験者の学力層が広いが、一方、個別試験は限られた層なのでそれに適した問題を出すことができる。 清水委員  初等教育と高等教育の接続の問題に関する部分をもう少し詳しく説明してほしい。 ⇒一例を挙げると、日本語は表記が難しく、CBTでの記述式問題の入力方式などは小学校の文字教育と関わるということが考えられる。 芝井委員  入学定員と受験者数のバランスの問題をどう考えるか? ⇒東北大学の立場としては発言できるが、全体としてまとめてではなく層化して考えなければ難しい。

米本さくら氏(東京都立西高等学校3年)

 高校生という当事者の立場から自身の留学経験も踏まえた意見を述べた。英語民間試験の導入は混乱を生むので、大学入試センターが一括して行うべき。  入試の変化でも教育に影響はあったが、それと並行して教育改革として4技能を教えるべきである。記述式は共通テストでは採用せず、個別試験で促進するべき。海外で行われているエッセイのように志望理由書などを拡大することもよいのではないか。

幸田飛美花氏(山口県立岩国高等学校3年)

 地方在住の高校生という立場から当事者の意見を述べた。英語4技能の評価は二次試験でやればよい。導入するとしても詳細な情報を提供できる体制が整ってから始めてほしいし、地域格差も考慮してほしい。入試改革以前に教育改革をするべきではないか。 【質疑応答】 末冨委員  受験料や交通費などの費用負担の不安はあるか?高校生の意見を聞くべきだったと思うか? ⇒(米本氏)都心に住む自分はよいが、香川の友人は大変だと言っていた。アンケートなどで高校生の意見を聞いてくれればよかった。 ⇒(幸田氏)近い試験会場でも1時間以上かかる。離島の人はもっと大変。当事者として戸惑いや焦りがあり、一番に声を聞いてほしかった。 島田委員  入試が教育に与える影響とあるが、ポジティブに捉えているか、ネガティブに捉えているか? ⇒(幸田氏)どちらともいえない。授業に偏りが生じ、入試対策がメインになるのはどうかと思う。
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英語の民間試験に批判的な委員も復帰
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