日本は超監視社会への途を歩むのか。成立したスーパーシティ法案の問題点と法成立後の課題。

国家戦略特区のいかがわしさ

 まず最初に、指摘しなければならないことは、「スーパーシティ構想の実現に向けた有識者懇談会」の座長は竹中平蔵氏であるということである。加計学園でおなじみの国家戦略特区制度を使い、日本の新自由主義改革をけん引してきたチームがそのまま横滑りしている。このことだけでも、この計画には警戒感を持って検討する必要がある。  そもそも、国家戦略特区は、法規制を外すための手法である。決定プロセスの透明性が低く、特定の委員やその関連企業など利害関係者からの影響がある疑いも強い。その象徴的な事例が加計学園の獣医学部新設問題で、申請から決定に至るまで、首相・官邸の圧力(ないしは官僚の忖度)によって公正な判断が歪められたことはほぼ明らかである。なぜ、個人情報保護のために積み重ねられてきた規制を国家戦略特区制度によって緩和してしまうことができるのかが問われている。

個人情報保護における同意原則の瓦解

 まず、第一に、なぜ、個人情報保護のために積み重ねられてきたシステムを国家戦略特区制度によって緩和してしまうことができるのかが問われている。  現在国や自治体や企業はその都市の住民に関するデータを別々のルールに従って別々に管理運用している。スーパーシティ法案の目的は、様々に張り巡らされている規制を取り払って個人データを一元化し、住民に対して「高い利便性」を提供しようとするものだとされている。  スーパーシティ構想の「肝」は、政府や自治体、企業、個人など異なる主体が保有するデータの連結である。例えば、国は国民の年金納付や納税、介護や医療に関する情報などを保有している。自治体も各人の住民税等の納税、住民票や戸籍、教育、水道など公共サービスの利用状況等、多くの情報を保有している。企業はさらに多様な個人情報――金融機関であれば預貯金額、電子決済企業であれば購入履歴、さらにIT企業はインターネットの閲覧履歴、スマホの位置情報を通じた行動履歴などの情報を保有している。これら個人情報は、国、自治体、企業が各法令に基づいて適切に管理することが定められており、各主体が個人情報を勝手に提供しあうことはできない仕組みになっている。  しかし、スーパーシティ構想ではこの垣根を取り払い、事業主体となる「国家戦略特区データ連携基盤」事業者が必要なデータを集めて管理・活用することができるようにしようとしている。法案には、データ連携基盤事業の実施者は、国や自治体にデータの提供を求めることができるとの規定が盛り込まれている。  北村誠吾規制改革担当大臣は、国や自治体が持つ住民の個人情報について、「本人同意が得られていないなど個人情報関係法令に違反している場合、国や自治体は提供を拒むことができる」と答弁している。しかし、国に適用される行政機関個人情報保護法においても、一定の場合には本人同意や通知がなくても、国は事業者への個人情報の提供をしてもよいと認めている場合がある。スーパーシティ構想のもとでの個人情報の提供がこれにあたると判断される可能性がある。政府は「個別事例で検討」するとしているが、現実には行政機関個人情報保護法の規定を掘り崩す危険性がある。  また自治体の場合は、それぞれの自治体の定める個人情報保護条例に沿う形になるが、政府はここでも本人同意なくデータが提供されるかどうかは各区域会議での判断によって例外的に情報提供ができると国会答弁の中で述べた。区域会議には自治体の首長が参加するが、議会や住民の意見が区域会議に反映できる仕組みはない。国や自治体が、本人への合意や通知なく個人情報を事業者に渡す可能性があることが国会審議でも明らかになったのである。

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