日本は超監視社会への途を歩むのか。成立したスーパーシティ法案の問題点と法成立後の課題。

梅田 今国会はコロナ対策の論議がメインであったが、途中から検察庁法改正案が焦点化し、採決見送りと黒川氏の辞任によって政府の責任が問われる展開となった。その一方で、「スーパーシティ」の構想実現に向けた改正国家戦略特区法案・通称「スーパーシティ法案」が超監視社会を招く危険があるのではないかという疑問が巻き起こり、検察庁法改正案に続いてあらたなツイートデモが起きる事態となった。  5月27日、法案は、参院本会議で与党自民党・公明党と日本維新の会などの賛成で可決され成立した。立憲民主党、国民民主党、社民党などの共同会派、共産党、れいわ新選組、沖縄の風などの立憲野党は反対した。

スーパーシティ法案の概要

 スーパーシティはもともとスマートシティとも呼ばれてきた。国土交通省はスマートシティを「都市が抱える諸問題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画・整備・管理・運営)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義していた。スーパーシティも基本的に同一概念と考えてよいだろう。  スーパーシティでは、行政や企業などが持つさまざまなデータを、分野横断的に収集・整理する「データ連携基盤」を整備し、車の自動運転やキャッシュレス決済、遠隔医療などのサービスを提供する。今後選定される自治体が、国や事業者と「区域会議」を設けて事業計画を策定し、住民の合意を得た上で国に申請し、関係省庁の検討を経て、迅速な実現につなげるとされている。しかし、この「住民の合意」の中身は後述するように大問題である。  スーパーシティ構想は、2018年10月「スーパーシティ構想の実現に向けた有識者懇談会」(座長は竹中平蔵氏)が設置され、その後に計6回の会議が持たれた上で、2019年2月に「最終報告」がまとめられたとされる。  スーパーシティ構想の本質は、「AI(人工知能)やビッグデータを活用し、社会の在り方を根本から変えるような最先端の『丸ごと未来都市』を、複数の規制を緩和してつくろう」というものである。その「実証実験」の場がスーパーシティに選定される自治体となる。  便利で快適な暮らしを実現することがスーパーシティ構想の目的であり、「自動走行」「ドローンでの自動配送」「キャッシュレス決済」「行政サービスのIT化(電子政府化)」「オンライン(遠隔)診療」「遠隔教育」「エネルギー、ごみ、水道などのスマートシステム」「防犯・安全のためのロボット監視」など、多くのメニューが例示され、このうち少なくとも5つの事業を組み合わせて同時に行うことがスーパーシティの要件とされている。  実は、2019年報告書が出た直後、内閣府は法改正案を国会に提出する準備にかかったが、内閣法制局から待ったがかかった。さまざまな規制緩和が「法律の範囲内で条例を制定することができる」ことを定めた憲法94条に違反すると指摘されたのである。いったん廃案になり、一部を修正して今国会に再提出する経緯となっていた。

スーパー・シティ法案の問題点まとめ

この法案の問題点は、次の2点に集約できるだろう。 1.個人の行動に関するさまざまなデータがスーパーシティの運営主体に集約され、AIによって分析される。市民のプライバシーが守られない仕組みとなる可能性がある。 2.住民による地方自治が危機に陥り、地方自治体の運営が情報企業の手にゆだねられる危険性がある。  つまり、自治と公共性を破壊し、プライバシーのないミニ独裁国家を生み出そうとするのがスーパーシティ法案の本質的な問題点である。
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