3位 『ハッピー・デス・デイ』(2017)&『ハッピー・デス・デイ 2U』(2019)
マスクを被った殺人犯に襲われるという、スタンダードなホラー映画をループものに落とし込んだ作品だ。主人公の女子大生は自己中心的で迷惑行為さえも正当化してしまう“ビッチ”なのだが、自分の幸せを最優先にしているからこその唯我独尊的なパワーを持ち合わせており、何度も殺されるという悲惨な状況であっても、「犯人の正体はどこのどいつだ!」「次は殺されずに生き残ってやる!」と向上心たっぷりに殺人鬼に逆襲をしていくことになる。
それだけでも黒い笑いに満ちたコメディホラーとして存分に楽しめるのだが、続編の『ハッピー・デス・デイ 2U』と合わせて観ることも強くオススメしておこう。そちらは物語、設定、キャラクター、演出に至るまで前作を観ていることを前提としたつくりであり、出来るだけ記憶が鮮明なほうが「あの時のアレがこうなっているのか!」という感動を得られるからだ。ネタバレ厳禁の展開の連続に驚き、悪意たっぷりのギャグに笑いつつ、意外なドラマ性にも泣かされるという、誰にでもオススメできるエンターテインメント性が存分の快作である。現在はどちらもAmazonプライムビデオで鑑賞できる。
2位 『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)
『うる星やつら』の作品群の中で異色かつ、飛び抜けて人気の高いアニメ映画だ。なぜか学園祭の前日が繰り返されてしまい、見知った町から人々の姿が消え、やがて荒廃していく。永遠に続くかのように思える、少しの狂気をはらんだ終末的な世界観は、唯一無二の魅力に満ち満ちていた。
「学園祭は当日よりも前日に準備している時のほうが楽しい」と良く言われている。「若い時は楽しければそれでいい」というのも1つの真理だ。しかし、どれほど楽しいことにも必ず終わりが来るし、いつかは大人にならなければならない。その残酷でもある真実を、本作は同じ1日をループする物語で逆説的に示していると言えるだろう。現在はいずれの配信サービスでも見放題ではないが、Amazonプライムビデオなどでレンタルでの鑑賞が可能だ。
邦題は安っぽいラブコメのようだが、実際は恋愛だけにとどまらない、重要な人生訓を説いた作品だ。自尊心が強く底意地も悪い天気予報官が、同じ1日を何度も何度も繰り返してしまう様が初めはコメディ調に描かれているが、やがて彼の筆舌に尽くしがたい苦悩が表出していくことになる。
現実で「代わり映えのない生活を続けているなあ」と思っている方は多いだろう。しかし、その生活のどこかには何かの“積み重ね”がある。しかし、同じ1日を繰り返してしまうループに囚われてしまうということは、その積み重ねがリセットされてしまうということ、まさに絶望につながり得る。その事実をもって、何かを積み重ねて成長していき、誰かと共に同じ時間を過ごしていくという、当たり前の幸せを実感できる物語になっているのだ。現在はU-NEXTで鑑賞できる。
おまけ:Netflixオリジナル作品ではループものが充実!そしてループもので学べることとは?
Netflixでは十分な予算をかけたオリジナル作品が多数製作されており、その中には前述した映画以外でも面白いループものがある。襲撃してきた刺客たちに立ち向かうSFサスペンス『ARQ 時の牢獄』(2016)、高い草が生い茂る場所での人間の浅ましさを描く『イン・ザ・トール・グラス -狂気の迷路-』(2019)、36歳の誕生会の夜を繰り返し体験する女性の姿を追うドラマシリーズ『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』(2019)がそうだ。
映画ではないが、絵本の『100万回生きたねこ』、マンガ『サイケまたしても』の第1巻、『ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない』の単行本45巻収録の一編「アナザーワン・バイツァ・ダスト」、ライトノベル『涼宮ハルヒの暴走』に収録の短編「エンドレスエイト」も、オススメのループものだ。
これらのループものは、同じ時間を繰り返す様を示しているからこそ、逆説的に限りある時間の大切を学べる、現実に活かせる気づきが得られるものばかりだ。時間とは無情にも過ぎ去るものだが、裏を返せば誰にも平等に与えられたチャンスでもある。これらのループものを観て、「今の時間でできることはないだろうか?」と考えたり、新たなチャレンジをしてみたり、自分の可能性を探求するということは、きっと良い人生への足がかりになるだろう。
<文/ヒナタカ>