首相の「記者クラブ」発言を内閣記者会が「ブラックアウト」
4月17日、会見で畠山氏の記者クラブに関する質問に答えた安倍首相
報道機関が談合して重要なニュースを伝えないことを
報道管制という。英語では
「ブラックアウト(black out)」と表現し、
「停電」「灯火管制」「瞬間的な記憶喪失」という意味もある。
最重要の課題をスルーするのが日本メディアの特徴だ。安倍晋三首相が4月17日の記者会見(コロナ禍で5回目の会見)で、フリーランスの
畠山理仁氏に「
記者クラブ制度」について聞かれたのに対して、こう答えた。
「時代の流れの中において、今までのメディアが全てカバーしているのかと言えば、そうではない時代になり始めたのだから、皆様方に議論をしていただきたい」
しかし、そのことを伝えた主要新聞・テレビ局はなかった。
筆者が調べた限り、安倍首相の記者クラブ問題に関する言及を報じた主要メディアは、共同通信が4月17日夜に配信した
<「全てカバーできない」 首相、既存メディア巡り>という見出しの記事(篠原雄也記者)だけだ。
この記事では、首相の認識を引用した上で、
<記者クラブの在り方そのものには言及しなかった>と書いたが、記者クラブ問題で報道界に対して「議論を」と呼び掛けた点については触れていない。
首相が記者クラブのあり方について初めて見解を示したのに、各社で報道管制を敷いているのだ。
安倍首相が自らの言葉で述べた発言が“なかったこと”に
畠山氏は
『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)で開高健ノンフィクション賞を受賞し、筆者も取材現場で一緒になることがある、優秀なライター・作家だ。筆者もFacebookで「首相の回答は、日本にしかない記者クラブ制度を調査研究してきた私から見ると、画期的な内容。畠山氏がよくぞ聞いてくれた」と書いた。
畠山氏は第二次安倍政権で7年半、会見に参加していたが、初めて指名されて質問した。安倍首相は、畠山氏が記者クラブ問題に触れた際、何度か笑みを浮かべた。回答の時にも、自然な表情を見せた。
畠山氏はもちろん質問の通告はしておらず、首相は自分の考えにもとづいて、自分の言葉で答えたのだろう。
日本の報道界は労資ともに記者クラブ制度についての議論をタブー視してきた。特に「革新」系メディア学者は、
「記者クラブ制度は海外にもある」などという詭弁をばらまいて、この差別制度を擁護してきた。
記者クラブ問題は、マスメディアとアカデミズムでは取り上げないので、一般の人々は記者クラブについてその歴史と現状をほとんど知らない。その意味で、安倍首相の問題提起を記者クラブ問題を社会化するための契機にしたいと思う。
首相の発言から1か月になるが、内閣記者会(正式名は「永田クラブ」「官邸クラブ」とも呼ばれる)、新聞労連などメディア関係労組、市民団体、学者も
首相発言を“なかったこと”にしている。いったいなぜなのか。