日本で育ったのに、大人になると突然理由なき「収容」。「人間扱いして」と訴えるクルド人女性

収容の辛い体験によって、持病のパニック障害が悪化

メルバンさんが仮放免の更新手続きのために通う東京入管

メルバンさんが仮放免の更新手続きのために通う東京入管

 24歳になったメルバンさんは現在も仮放免の立場で、2か月に1度、東京入管へ仮放免手続きのために通っている。入管1階にある部屋で、職員に「早くトルコへ帰りなさい」「帰らないとまた収容するわよ」と毎回脅されるのが苦痛でたまらない。男性職員にも女性職員にも言われるという。  かつて、東京入管の1階で捕まって10階の収容施設まで連れて行かれた経験があるので、その時のことを思い出していつも怖い思いをしている。時には「頭おかしいんじゃない?」といった侮辱を受けることもあるが、「知ってるでしょ、私は(病気で)頭がおかしいの!」と気丈に返す。  来るたびにそう言われ続けるので、言われても無視をするようになり、黙ってその場をやり過ごすようになった。  解放されてもしばらくは、悪夢を見ては飛び起きるという繰り返しだった。毎日のように入管職員に暴力をふるわれる夢を見ては、夜中に飛び起きていた。次第に眠れなくなってしまい、持病のパニック障害は収容のため悪化。収容されたことによるトラウマや、やり場のない苦しみにひたすら耐え続けた。

「税金払っていてもいつかはビザを切られる。バカみたいだよ」

 ある日、激しい目の痛みに襲われ、耐えられず叫んだ。目が飛び出すのではないかと思うくらいの激痛が襲う。片目が絵の具をグチャっと塗りたくられたような感じになり、気持ちが悪くなって吐いた。  大騒ぎをして救急車で運ばれ、医者に診てもらうと「ストレスが原因」だと言われた。今は回復しているが、その時は急激に視力が落ちてしまっていた。一方、持病のほうの回復の兆しは見られず、医者には入院を勧められた。しかし「保険がないので、とても無理だ」と諦めてしまった。  入管に「保険証がほしい」と頼んでも、「ビザがないからダメ」と断られてしまう。「保険がなければ大金がかかってしまう。どうか人間扱いしてほしい」といくら嘆願しても、職員は「ルールだから」と、とりあってもらえない。  彼女の夫もクルド難民であり、6か月の特定活動ビザを持っているため税金もしっかり払っている。メルバンさんは夫に、いつもこう言っている。 「税金払っていても意味ないよ。真面目に生活していたって、いつかはビザを切られるんだし。バカみたいだよ」  しかし夫は、メルバンさんのために「税金を払い続ける」と言う。
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仮放免者も人間扱いしてほしい
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