最初のSIRモデルでは、日本全国を一つのエリアとして考えていました。これは、北海道から沖縄まで人々が混ざり合う状況を想定しています。しかし、実際は他県への移動の自粛を要請されるなどの措置が取られていますので、都道府県ごとに分けて考えた方が現実の値に近づきます。
以下では、4月1日の各都道府県の人口、4月30日現在の感染者数と実行再生産数の推定値を元に、実行再生産数がこのままであった場合の各都道府県の今後の(これまでは含めない)最終死亡者数の予想数値を示します。使っているデータの数値が同じであれば、誰が計算しても同じ結果になりますので、使用している数値を公開しておきます。
都道府県の人口は
「都道府県人口・面積・人口密度ランキング」(4月1日現在)、累計感染者数の人数は「COVID-19日本速報」(4月30日現在)、実行再生産数は「RtCovid-19Japan」の4月27日から5月1日までの最頻値の平均を採用しています。
なお、リアルタイムでの正確な実効再生産数を測るのは現実には不可能であることはご理解ください。また、鳥取県のように人口の少ない県では、実効再生産数の90%の信頼区間の幅が広いため(鳥取県は0~4.4程度)、真の値と最頻値との誤差も大きく、結果の予想値にもかなりの誤差を含んでいます。逆に東京都などの人口の多い都道府県では、実効再生産数は真の値に近い値が表示されていると考えられます。
念のため、使用した実効再生産数の最頻値を記しておきます。これはすでに述べたように、5月1日から5月6日までの6日間の最頻値の平均値です。(ここでは、小数第3位を四捨五入します。)★印のある都道県は、5月1日から5月6日の間に数値が0.5以上変動した(安定しない)地域です。また、赤字は数値が1を超える県です。
★北海道(0.53)、青森県(0.50)、秋田県(0.45)、岩手県(0.00)、山形県(0.73)、宮城県(0.43)、福島県(0.65)、新潟県(0.44)、茨城県(0.43)、栃木県(0.43)、群馬県(0.42)、埼玉県(0.36)、千葉県(0.33)、★東京都(0.85)、★神奈川県(0.56)、山梨県(0.44)、静岡県(0.51)、長野県(0.46)、富山県(0.55)、石川県(0.43)、福井県(0.45)、岐阜県(0.42)、愛知県(0.36)、三重県(0.46)、奈良県(0.45)、和歌山県(0.46)、滋賀県(0.44)、京都府(0.41)、大阪府(0.28)、兵庫県(0.35)、岡山県(0.39)、広島県(0.48)、鳥取県(2.11)、島根県(1.49)、山口県(0.37)、香川県(1.24)、愛媛県(0.51)、徳島県(0.47)、高知県(0.44)、福岡県(0.31)、佐賀県(0.73)、長崎県(0.41)、大分県(0.46)、熊本県(0.38)、宮崎県(0.46)、鹿児島県(0.62)、沖縄県(0.40)
以下は、5月6日の段階ですでに隔離された人数の2倍の市中感染者数がいる場合の今後追加される最終死亡者数の理論上の予想値です。例えば、東京都は5月6日の段階で4748人の感染が判明していましたので、まだ、発見されていない市中感染者が9496人いるとした場合の予想数値です。
【市中感染者数が判明分の2倍の場合】
全国39110人(最小ケース3423人)
北海道144人/青森県4人/岩手県0人/秋田県2人/宮城県12人/山形県17人/福島県16人
新潟県11人/富山県35人/石川県37人/福井県17人
栃木県7人/群馬県19人/茨城県23人/埼玉県113人/千葉県102人/東京都2011人/神奈川県189人
山梨県8人/長野県10人/静岡県11人/岐阜県20人/愛知県61人
三重県6人/奈良県12人/大阪府192人/和歌山県9人/滋賀県13人/京都府45人/兵庫県83人
鳥取県13736人(1.2:5230人、0.8:1人)/島根県11629人(1.2:6347人、0.8:1人)/岡山県3人/広島県24人/山口県5人
德島県1人/香川県10340人/愛媛県7人/高知県10人
大分県8人/福岡県76人/長崎県2人/佐賀県11人/熊本県6人/鹿児島県2人/宮崎県2人/沖縄県19人
図の中の数値で、鳥取県、島根県、香川県は実効再生産数(の最頻値)が大きいので数値が突出していますが、先ほども述べたように、実際は、鳥取県の実効再生産数の90%信頼区間は0~4.4、島根県は0~3.2、香川県は0~3.5のように幅が広いので最頻値だけでは正確な値は出ません。
特に、鳥取県は新型コロナ対策に成功している県と言われていますから、実際のところは最頻値周辺でなくもっと小さい可能性があります。そこで、参考として鳥取県と島根県は実効再生産数が1.2の場合と0.8の場合も記載しておきました。特に、鳥取県の場合は0.8よりも少なくなれば、今後死者は出ない可能性があります。香川県については、実効再生産数が0.8の場合を参考値として記入しておきました。さらに、全国の人数の「最小ケース」とは、この3県の実効再生産数を0.8とした場合の数値です。
このようにブレの大きい地域があることから、日本全国の最終的な死者数の予想は困難になります。
次に、市中感染者が隔離された人数の10倍いるとした場合の最終死亡者数です。例えば、東京都は5月6日の段階で4748人の感染が判明していますから、市中感染者が47480人いるとした場合の予想数値です。これは、西浦先生の「まだ市中には隔離された人数の10倍程度、未発見の感染者がいる」という発言を受けたものです。この場合も鳥取県、島根県、香川県では実効再生産数の誤差が大きいということで、参考値も同時に記しておきました。
【市中感染者数が判明分の10倍の場合】
北海道610人/青森県16人/岩手県0人/秋田県9人/宮城県49人/山形県78人/福島県103人
新潟県44人/富山県148人/石川県151人/福井県70人
栃木県31人/群馬県80人/茨城県94人/埼玉県455人/千葉県409人/東京都9003人/神奈川県807人
山梨県32人/長野県43人/静岡県47人/岐阜県82人/愛知県246人
三重県26人/奈良県49人/大阪府756人/和歌山県36人/滋賀県55人/京都府184人/兵庫県333人
鳥取県13736人(1.2:5233人、0.8:5人)人/島根県11635人(1.2:6369人、0.8:37人)/岡山県12人/広島県99人/山口県18人
德島県3人/香川県10361人(0.8:43人)/愛媛県31人/高知県42人
大分県35人/福岡県303人/長崎県9人/佐賀県51人/熊本県23人/鹿児島8人/宮崎県10人/沖縄県76人