他に字幕他写真などの展示もありましたが、何より目を引いたのは
タブレット(通票)*閉塞装置です。
この装置は、閉塞区間の両端、原則として駅と隣駅の間で一対一で接続された機械で、駅ではよくチンチン鳴っていました。朝日ソノラマの消えゆく蒸気機関車シリーズ・ソノシート板でもタブレットマシンの動作音がよく収録されていたものです。
〈*国鉄時代は、タブレットを通票と呼称し、通票閉塞区間などという言葉が普通に用いられてきたが、JR化後、タブレット(タブレット閉塞)、通票(票券閉塞)、スタフ(スタフ閉塞)と再定義された。本稿では国鉄式の呼称を用いている〉
このタブレットマシンは、自動信号化されるまで日本中の駅と信号所にありましたが、タブレット(閉塞区間固有の記号が打ち抜かれた玉)がしばしば機械からでてこなくなり、現場の知恵で玉を曲げた針金で引っ張り出すことが罷り通っていました。その結果、閉塞が破れて列車の正面衝突という大事故が生じました。
タブレット閉塞は、原理的には極めて単純明快な仕組みなのですが、機械の不調とヒューマンエラーが重なることで大きな事故の歴史を積み重ねてきています。今日の自動列車停止装置(ATS)、列車集中制御方式(CTC)と自動閉塞方式などは、機械の不調やヒューマンエラーがあってもフェイルセールになるように設計されていますが、やはり完全ではなく、
福岡教育大前駅・海老津駅間の信号冒進・列車衝突事故など大小のインシデントや重大事故が根絶できてはいません。鉄道の信号、閉塞システムは鉄道発祥以来の鍵となる技術ですが、まだまだ改良の余地があります。自動車と違い、横に逃げられない、動摩擦が小さく(エネルギー効率がたいへんによい)かつ大質量であることから制動距離がたいへんに長い、走行速度が高いことなどが、装置の不具合やヒューマンエラーへの脆弱性となっています。
だるまストーブ、閉塞器電鈴合図(チンチン鳴る)、硬券切符他2018/11/02撮影 牧田寛
タブレット閉塞器(国鉄時代は通票閉塞器と呼称)2018/11/02撮影 牧田寛
二台一組でそれぞれの駅に置かれ専用通信線で接続されていました。通票(タブレット)発行可能となると下部引き出しから玉(タブレット)が出てきました。問題は、内部で玉がよく引っかかり、玉を出すためにいろいろやってはいけないことが日常的に行われたことで、大小インシデントや重大事故の原因となりました。
使い終わった玉は、上部引き出しからこの装置に戻します
タブレット閉塞器操作手順2018/11/02撮影 牧田寛
非常にわかりやすい、明らかに手作りの説明板です
隣の中萩駅通票(タブレット)閉塞器2018/11/02撮影 牧田寛
通票発行可能になるとロックが外れて下部引き出しから玉が取り出せますが、時々中で引っかかり、玉がでてこなくなりました
また、おなじみの
レールのぶつ切りが展示されています。レールは、1m当たりの重さで分類されており、30kg,37kg,40kg,50kg,60kgレールが主として使われてきています。レールの重さが重くなるに従い、丈夫で歪みにくく、衝撃に耐えるので、高速大量輸送に使えるようになります。
レールの展示はなぜか南館と北館にわかれており、南館では在来線のレールが、北館では在来線の幹線用と新幹線用が展示されています。北館では、枕木に犬釘で固定されています。
レールの種類1(四国鉄道文化館南館) 2018/11/02撮影 牧田寛
50kg,40kg,37kg,30kgレール
50kgレール:幹線用
40kgレール:亜幹線、地方線用
37kgレール:側線用
30kgレール:側線用(現在は生産されていない)
レールの種類2(四国鉄道文化館北館)2018/11/02撮影 牧田寛
50Nレール、50Tレール、60kgレール
50N:在来線幹線用
50T:かつての東海道新幹線用
60kg:現在の新幹線用
DF50-1の1エンド側には、パンタグラフが展示されています。小さい方が新幹線0系電車用、大きな方が、JR四国8000系電車用です。そしてよく見ると後ろに集電舟が展示してあります。展示物に対して建物が過小のために油断すると見落とすような場所に展示物があります。まるで「ウォーリーをさがせ!」の趣があります。実は本稿執筆のために写真を選んでいると、現地では気がつかなかった展示物が見つかります。しかも殆どの展示物に説明シールが貼ってあります。
新幹線0系電車用パンタグラフ(左)とJR四国8000系電車用パンタグラフ(右) 2018/11/02撮影 牧田寛
吊架線、ハンガー、電車線といった架線の構成も説明してあります
油断すると見落としてしまう新幹線電車用集電舟2018/11/02撮影 牧田寛
0系、100系用集電舟
300系、700系用集電舟
集電すり板はかなりすり減っています
電車線と説明2018/11/02撮影 牧田寛
後ろに写っているのは西条駅ホームとフリーゲージトレイン