日本経済はリーマンショック、ブラックマンデー、バブル崩壊以上の深刻な経済の落ち込みが確実視されている。4月9日に日本銀行の支店長が集まり、全国を9つの地域にわけて景気の現状を分析する「
地域経済報告」をまとめた。9つすべての地域で景気判断を引き下げた。
リーマンショック直後の2009年1月以来だ。特に北海道と東海地区は「下押し圧力が強い」とした。これは、日本経済に最後のダメ押しをしたようなものだ。それでなくても日本経済はコロナ以前に失速していたからだ。
2019年10月に消費税を10%にしたため、個人消費・住宅・設備投資は深刻な打撃をすでに受けていた。10ー12月期のGDP(国内総生産)は年率換算でマイナス7.1%。3月末の月例経済報告では景況判断から6年9か月続いて記されていた「回復」の文字が消え「急速に厳しくなっている」とされた。これに加えてのコロナショックなのだ。
リーマンショックの後は中国が世界経済を回復させる牽引役になったが、今回はリーマンショック後でさえもプラス成長だった中国経済が1992年に市場経済を取り入れて以来、初めてのマイナス成長になる。失業率30%になるとされるアメリカもマイナス成長、さらにイギリスのブレグジットで混乱の渦中のヨーロッパもユーロ圏統合後で最悪のマイナス成長になることは間違いない。
このために各国は大規模で中身のある経済対策をスピード感を持って発表した。アメリカは3月27日に230兆円の経済対策予算を通し、4月2週目には早くも27兆円の追加予算をまとめた。国民個人への支援も厚い。
ヨーロッパ各国も極めて異例の予算を次々と組んで支援を始めた。フランスは法で定めら最低賃金の4.5倍を上限に給与の100%、イギリスはフリーランスも含めて賃金や収入の80%、ドイツは時短勤務となった場合には給与の補填を最大67%することに加え、社会保障費の全額肩代わりを提示した。そのほか休業に追い込まれた中小の店舗などに家賃や光熱費の補助などを実施するなど、国民が安心して自宅待機でき、中小企業も含め休業しやすい対策を打ち出した。
日本政府が4月7日に発表した108兆円も数字的には欧米に決して劣らない、この規模なら国民が渇望している緊急経済対策のはずだ。しかし、新たな赤字国債の発行は14兆5000億円ということに私は疑問を持った。そして、その経済対策の中身を見ていくと、驚くばかりのことばかりだったのだ。
メディアでは108兆円という数字ばかりが強調されるが、その前につく言葉をご存知だろうか?「
事業規模」という言葉だ。108兆円は事業規模なのだそうだ。加えて財政支出は39兆5000億円とある。つまり
政府の支出を伴うものは40兆円に満たないわけだ。支出は108兆の3分の1強。支出を伴わないものも含む108兆円の事業規模にはどんな事業があるのだろう?
最初に目がついたのが26兆円分の事業である。これは、資金繰りが苦しくなるであろう企業などの税金や社会保障費の納入を1年間猶予するものだった。経済対策の4分の1の26兆円は、
国に収めるカネを1年間待ってやるという事業だった。さらに、支出を伴うものであっても、
昨年の台風19号などの一連の災害からの復旧、復興などのため2019年12月に決定した経済対策のうち19兆8000億円分を108兆円の一部として組み込んでいた。
4月7日に発表された緊急経済対策は新型コロナウイルス対策に対してのものだと国民の多くが思っているはずだ。メディアもそういう趣旨で報道しているが、実際は
去年の台風などの災害ですでに発表されている経済対策をもう一度カウントしていたのである。