「自分でやってみる」から生まれた国会パブリックビューイング

『国会をみよう 国会パブリックビューイングの取り組み』出版記念ライブトーク

2020年3月25日 『国会をみよう 国会パブリックビューイングの取り組み』出版記念ライブトーク。写真左より、真壁隆、横川圭希、上西充子、伊藤圭一。

一変した世界の中、新たな歩みを始めるということ

 4月7日、東京を含む7都道府県に緊急事態宣言が発令された。東京の新規感染者の増加は続き、経路不明の感染者の割合も高い。こういう状況に至った今になって、気をつけながらもまだ日常生活が続いていた頃の出来事を振り返ることには、やや躊躇がある。  けれどもこの記事では、3月25日に国会パブリックビューイングがライブ配信した『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』出版記念ライブトークを、メンバーの真壁隆さんに焦点を当てる形で振り返っておきたい。 『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ、2020年)に書いたように、私が国会審議を街頭に持ち出したいと考えたのは、働き方改革関連法案が衆議院厚生労働委員会で2018年5月25日に採決され、そのことが翌朝の日本経済新聞の一面では全く報じられなかったことに問題意識をもっていた中で、6月11日にツイッターで下記の通りヒントを得てのことだった。  一方、真壁さんは国会パブリックビューイングの中で映像の制作と上映を担っているのだが、彼が路上の行動の撮影を始めたのは、2015年9月に安保法制が可決成立した、そのあとの国会前での抗議行動でのことだった。  ままならない現実のなかで、自分ができることを考えて自分から動き出したのがその2015年当時の真壁さんであり、そしてその真壁さんらの尽力によって2018年6月11日の私のアイデアを4日後の6月15 日に新橋SL広場で実現したのが国会パブリックビューイングの始まりだった。  それぞれの問題意識をもとに一人ひとりが自分から動き出したその先に、国会パブリックビューイングという合流地点があった――そういう経緯を書き残しておくことが、一変した状況の中で新たな歩みを始めなければならない今、なにがしかの意味を持つことを願う。

国会PVの映像制作・上映担当、口数の少ない真壁さん

 3月25日の出版記念ライブトークのねらいは、国会パブリックビューイングの活動の意味を複数の関係者の視点から立体的に振り返ることだった。2時間10分にわたるトークの全体は、真壁さんの手による下記の編集後の映像をご覧いただきたい。  以下ではトークライブに登場した4名のうち、国会パブリックビューイングの事務局長である真壁隆さんに焦点をあてる。  横川圭希さんについては『国会をみよう』に「他人が書いた自分の日記を読んでいるみたい」(横川さん談)というほど頻繁に登場しており、伊藤圭一さんも同書と前著『呪いの言葉の解きかた』(晶文社、2019年)に登場しているが、真壁さんについては、その行動を『国会をみよう』に紹介したものの、どういう思いで国会パブリックビューイングの活動に参加しているのかについては、「なりゆきですかね」という一言しか収録することができなかった。  それは真壁さんが普段、口数の少ない人で、私もそれ以上、深く尋ねることはしなかったからなのだが、今回のライブトークでは真壁さんが多くのことを語ったので、その「なりゆき」が、他律的に状況に引き込まれていったというものではなく、主体的に関係性に踏み込んでいったものであることが理解できた。  真壁さんは現在の国会パブリックビューイングにおいて、映像制作と上映をほぼ一手に引き受けている。2018年に制作した解説つき番組「第1話 働き方改革―高プロ危険編-」と「第2話 働き方改革―ご飯論法編―」は横川さんが手がけたものだが、2018年秋以降に国会パブリックビューイングが街頭で上映してきた入管法改正(外国人労働者受け入れ拡大)、統計不正、民間英語検定試験、桜を見る会などの国会審議映像は、真壁さんが切り出して字幕を付けたものだ。  切り出す国会審議の場面を私が指定し、パワーポイントでスライドを作成する。真壁さんは、切り出した映像に字幕をつけてパワーポイントに貼り付け、街頭で上映してYouTubeでライブ配信し、その上映を撮影・録音し、より見やすく編集したものを改めて国会パブリックビューイングのYouTubeチャンネルで配信する。そういう根気のいる作業を、こつこつと積み重ねてきたのが真壁さんだ。  3月25日の出版記念ライブトークも真壁さんがセッティングし、みずからもトークに加わりながら画面の切り替えや合成、マイクの音量調整などを担当していた。
マルチタスクな真壁さん(写真左)

マルチタスクな真壁さん(写真左)

 下記の写真でモニタの左半分に映っているのは、前方に設置されたビデオカメラがとらえたトークの場面。右半分が配信映像で、この場合は写真を示したスライドの右上に、そのトークの様子が組み込まれている。
モニタを見ながら映像の切り替えを行う真壁さん(写真奥)

モニタを見ながら映像の切り替えを行う真壁さん(写真奥)

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ビデオカメラもなかったのに始めた、2015安保法制からの動画撮影
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