果たしてイベント関係者が東京五輪が延期になったのだから、貸し出しを再開するよう交渉することは可能なのか。その交渉がすんなり進むとは思えない。
筆者は2017年から、会場問題を取材してきたが、そこは複雑な利害が入り交じる場であった。ある展示会関係者からは、こんな話を聞いた。
「主催者側の企業は、現状の使用制限に反対する一方で、制限された場合もその部分で利用する前提でスケジュールを立てています。そこに、関連産業の事業者との温度差があることは拭えません」
主催者同士でも制限された中で自分のところが、よりよい日取りとスペースを獲得したいという思いもあった。そうして開催されるひとつのイベントに関わるすべての企業や団体、個人が一致団結して交渉をするのは困難だった。なにより、交渉相手のほうも東京ビッグサイトは東京都の第三セクター(正確には第三セクターの子会社)。会場の決定は、東京都とオリンピック組織委員会が行うのだが、結局誰が責任を負う立場なのかは、いまだによくわからない。ゆえに「五輪が延期になったのだから、使用停止も延期に」がおいそれと決まるとは思えない。
ここで思い出すのは2017年7月1日のことである。
この時行われていた東京都議選。秋葉原での候補者の応援演説に登場した自民党の古屋圭司衆議院議員(『マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟』会長)は、東京ビッグサイトの問題を取り上げ「この交渉は、我々自由民主党でしかできません」「小池知事や組織委員会、こういった所にしっかり交渉」「タフネゴシエーションを通じて、しっかりそういう取り組みをしていく。このことをお約束申し上げます」と演説した。
この演説のメモを作ったのはネット選挙で注目された同党の山田太郎参議院議員であった。その後、ほかにも幾人かの政治家が加わり、不安を抱える関係者に耳障りのよい言葉を囁き続けた。けれども、やがて会場の使用停止が避けられないとなると、彼らは自分の責任を回避する言葉を吐きながらフェードアウトしていった。
提灯記事を得意とする書き手や御用学者は、もうこのことも忘却しているようである。
そうした魑魅魍魎が跋扈するとしても、来年まで東京ビッグサイトを塩漬けにするのは、あり得ない。
果たして、コロナがいつ終息するのかは誰にもわからない。この未曾有の災害は、ブランキ的には電撃的にやってきた革命情勢である。落ち込んでばかりはいられない。このピンチをいかにチャンスへと転嫁していくのか。
<取材・文/昼間たかし>