既に秋以降150以上のイベントが契約済み。東京五輪延期でどうなる東京ビッグサイト

東京ビッグサイト

Ryuji / PIXTA(ピクスタ)

東京オリンピック1年延期で広がる困惑

「3月は例年の50%減。そろそろ5月のコミックマーケットの原稿が入ってくるはずなのですが、まったく動いていません」  苦境を語るのは、同人誌を専門に扱う印刷会社・株式会社栄光の岡田一社長だ。  新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、全国で次々とイベントが中止になっている。全国各地で開催されているマンガやアニメを中心とした同人誌即売会も同様だ。  東京五輪の一年延期が決定し、去就を明らかにしていなかった5月2日から開催予定の同人誌即売会・コミックマーケットも中止が決定した。  どんな影響が出るか精査もなく勢いだけで決められた東京五輪の一年延期。これによって、多くの企業が事業縮小、破綻へと追い込まれるのは避けられない情勢だ。

弱者切り捨ての東京五輪メディアセンター

 コミックマーケットの会場として使用される予定だったのが、大規模就職説明会や国際的な産業の見本市などに利用されている日本最大級のイベント会場である東京ビッグサイトだ。    このビッグサイトの利用をめぐり、これまで数年にわたってイベント主催者や関係企業は翻弄され続けて来た。東京ビッグサイトが東京五輪のメディアセンターとして利用されるために、開催期間とその前後に利用が停止されるためだ。  東京ビッグサイトで年間に開催されるイベントは300以上にのぼる。どんな業界であっても、ここで開催されるイベントはなくてはならないものだった。産業系のイベントに出展する専門性の高い技術を売る会社にとっては、顧客を開拓する手段はほぼ年に一度のイベントに限られているところもある。  イベントは主催する企業や団体だけで成立するものではない。業界では「協力企業」と呼ばれる無数の企業がそこにはある。展示のためのブースを設営するディスプレイ施工会社、配布する資料を印刷する印刷会社。ケータリングや警備、通訳やコンパニオンなどの人材派遣などイベントによって日々の糧を得ている会社は無数に存在する。

開催3年前まで知られてなかった損失額

   それ自体が巨大な市場である東京ビッグサイトが東京五輪のために使用できなくなるという話が広まり始めたのは2017年初頭からであった。この頃まではまだ、深刻な雰囲気はなかった。東京ビッグサイトが使用できなくても、同じく巨大な展示場である千葉県の幕張メッセが使用できると思われていたからだ。  ところが幕張メッセも競技会場として利用されることがわかり、にわかに危機感が増した。この時点では準備工事と撤去のため2019年4月から2020年11月までが一部、および全館が利用できない期間であるとされていた。  関係企業や団体からの批判を受けて2017年4月に東京ビッグサイトは改善案を発表。一部が利用できなくなる2019年にりんかい線青海駅前に仮設展示棟を設けること。利用不可の期間を短縮することが告知された。  しかし、それでも損失は避けられないことは明らかだった。関係者によって結成された「展示会産業で働く人々の生活と雇用を守る会」の主張では東京五輪によって直接イベントに関係する企業、のべ1600社が約2400億円の売上を失うこと。さらに各種のイベントに出展している企業、のべ8万2000社が2.2兆円の売上を失うとされていた。  同会では3度にわたって都庁にデモを行うなどして東京ビッグサイトの使用を見直すこと行った。また主催者企業などが加盟する業界団体・日本展示会協会でも積極的な働きかけを行ったものの状況は改善しなかった。  その間、2017年9月には小池百合子都知事が突如、記者会見で「コミケ関連で使えるように調整をしている」として、例年は8月と12月に開催されているコミックマーケットなど同人誌イベントに特別に2020年5月1日から5日まで東京ビッグサイトを提供することを表明。主催団体はこれを受け入れたものの「オタクに媚びておけば問題が沈静化すると思っているのではないか」と当のオタクからも批判される椿事もあった。
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このままでは来年まで使用できない可能性も!?
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