同時にとんでもないニュースが飛び込んでくる。それが、冒頭の「タイ入国時に全外国人に診断書の提出が義務づけられ、22日午前0時から適用される」という在タイ日本大使館からの一斉メールだった。ここでも情報が錯綜し、SNSでは21日から始まるとも言われた。こうなると、筆者が確実にタイに帰ることができるのは20日中でないとならない。ベトナムでもその診断書が出るかわからないことと、ベトナムでどこかに強制収容されてはたまらない。
ベトナム航空とタイ国際航空がベトナム-タイ間を1日に何便も飛ばしているのでネット検索してみると、ベトナム航空は地方の空港から翌1日の朝に出る便しかない。タイ航空は20日20時半に出る便があった。これなら20日中にタイに到着する。
筆者はその便を急遽買い直し、タイに戻った。昼間のタイ航空はほぼ空でタイに飛んだという情報があったが、夜の便は満席だった。大半が欧米人のバックパッカーらしき人々だ。おそらく、格安航空会社でチケットを持っていたものの、筆者同様に欠航になったため、駆け込みでこの便に乗ったと見られる。
ハノイの空港ノイバイ国際空港は、その日1~3時間に1本というほどフライト数が減っていた。そのため、空港自体にはほとんど人がいないが、タイ航空のチェックインカウンターだけ乗客が殺到している異様な光景だった。
3月20日、ハノイのノイバイ空港でタイ航空の夜便に殺到する観光客たち
フライトは順調で、なんら問題なくタイの玄関口であるスワナプーム国際空港に到着する。問題は入国が可能かどうかである。
3月20日のタイ航空最終便は満席だった
タイではその数日前からすべての入国者に対し、健康診断の自己申告を提出するように義務づけていた。実施後に入国した人の話では、2時間くらい待たされたという人もいれば、簡単にチェックされて終わったという人もいた。おそらく欧州など警戒されている国からの便は時間がかかり、そうでない国は簡単ということなのかと見られる。その点で言えばベトナムは早いはずだ。ただ、到着が22時半なので、2時間後から実質的な入国規制に入る可能性があり、すでに厳しくなっている可能性もあった。
その健康申告は入国審査場の手前で行われる。審査場の前にゲートを設け、申告が完了したらゲートを抜け、入国審査を受けられる。その申告所の前はたくさんの人で溢れかえっていた。ただ、列に並んでいるというわけではなく、多くの人がスマートフォンとにらめっこしている状態だった。
というのも、この自己申告は用紙、もしくはスマホのアプリで申告することができる。特にアプリの方は入国中に行動を追跡できると言われ、タイ政府はアプリの方を推奨しているという話がある。実際に係員たちも英語でアプリのダウンロードを勧めており、一切紙についてはアナウンスしない。
そこで筆者はタイ語で「自分は紙の方がやりやすいんだけど」と言うと、特に訝るわけでもなく、さっと用紙を渡された。この記入に2分程度、係官に紙を渡し承認のスタンプを受けるのに数秒、入国審査は人が並んでいないのでここも数分で終わった。むしろ、通常時よりも早くタイに入国することができた。