岩波新書『独ソ戦』が異例のヒット! その背景にビジネスマンの「戦略的思考」ニーズ

戦争が近づいていることを感じている人が多い?

 そして、ベストセラー化の決め手はやはりというか、著者である大木氏の筆致や該博な知識がもたらす本としての面白さであった。 「5万部を超えると、そこから先は評判が評判を呼ぶベストセラー効果が生まれてきます。とくに大木さんの筆致が素晴らしく、読者を飽きさせず、ページをぐいぐい繰らせる叙述と論述が見事でした。『通史や概説の執筆にあたって必要不可欠なのは、何を書くかではなく、何を書かないかを判断するための物差し、言い換えれば、当該のテーマをいかに分析するかの枠組みである』とご自身が述べるように、『新書』というコンパクトな概説書の特長と利点を十分に理解し、『これぞ新書』と呼べる本に仕上げてくださったのも要因と考えられます。端的にいえば、面白いのです」  一方で永沼さんは過去の戦争への反省がもたらした軍事への「忌避感」が、昨今の世界情勢から薄れ、戦争への危惧が皮膚感覚に近いものになっていることもヒットの要因ではないか、とも指摘する。 「近年、軍事や戦争に関する本が手堅く売れるのは、人びとの皮膚感覚として、戦争が以前にもまして近くに感じられるからではないか、と私には思われます。中国の軍事大国化、ロシアの帝国主義的回帰、伊藤計劃の『虐殺器官』さながらの暗殺国家と化したアメリカ。大国のこうした不穏な動きが、かつて日本が歴史の彼方に置いて封印した軍事というものに、人びとの目を向けさせつつあるように見えます。『独ソ戦』のベストセラー化を読み解くうえで、いまひとつ必要な視点ではないかと思われます」 <取材・文/福田慶太>
フリーの編集・ライター。編集した書籍に『夢みる名古屋』(現代書館)、『乙女たちが愛した抒情画家 蕗谷虹児』(新評論)、『α崩壊 現代アートはいかに原爆の記憶を表現しうるか』(現代書館)、『原子力都市』(以文社)などがある。
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